2022.01.01 08:38
縮む時代、移ろう「すみか」―高知(ここ)に住まう 第1部 県都マンション熱(1)
上空から見た高知市中心部。高層マンションが目立つ(同市本町3丁目、ドローンで佐藤邦昭撮影)
すっくと、空へと伸びる建物が高知市のおまちで目立ち始めた。近年、中心部で高層分譲マンションが建設ラッシュを迎えている。いつの間にか、当たり前のように変わりつつある県都の風景。そこには地方都市の歩みと、これから迎えるであろう未来の姿が投影されている。
昼下がりの高知市の追手筋を、オーテピアから東に歩く。数年前まで駐車場だったスペースに、グレーのシートで覆われた高い建物。中から、乾いた工事音が響いてきた。
買い物客や家族連れとすれ違いつつ、さらに東へ300メートルと少し。高知大丸の駐車場と事務所があったビルも消えて、ぐるりと囲むフェンスにはこんな看板が掛かっていた。
「都心を愉(たの)しみ、住みこなす」「新発表 事前予約受付中」
10年前の住宅地図と見比べると、変容ぶりがくっきり。中心商店街とその周辺だけで新しいマンションが10棟以上でき、さらに5棟が建設中だ。
区画整理を経てすっきりしたJR高知駅周辺にも数棟建つ。イオンモール高知のそばに移った高知赤十字病院の跡地でも、その向かいでも工事が進んでいる。
どこも、一昔前なら「こんな所にマンションが?」と驚くような場所。しかし、建ったら建ったで、さほど違和感を覚えない。このラッシュはいつまで続くのか。どんな人が住んでいるのか―。
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総務省が昨年11月末に発表した国勢調査の結果によると、高知県の人口(2020年10月1日現在)は戦後最少の69万1527人。昭和以降で初めて70万人を割った。
5年前の前回調査と比べた減少率は、過去最大の5・0%。少子高齢化は加速し、全34市町村で人口は減っている。一方で、人の偏在が進んでいることも見過ごせない。
高知市の人口は32万6545人。県全体に占める割合は47・2%で前回調査より0・9ポイント上昇した。県都一極集中はより顕著になっており、この動きに呼応するように今回の建設ラッシュは起きた。
「車の運転ができなくなっても、買い物や通院に便利。年を取ると、一軒家の管理は大変だから」
「いずれ南海トラフ地震が起きることを考えると、安全性がより高いように感じて」
「もし人生設計に狂いが生じても、転売や賃貸がしやすい気がする」
長い老後。日々感じる地域の衰え。地震への不安。そして、子や孫に「何を残すのか」という視点―。「まちなか住居」を選択した人たちから、今の高知を映すキーワードが聞こえてきた。(報道部・井上智仁)
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人口減少によって縮み続ける高知県で、私たちの「すみか」が移ろっている。中山間地域には消滅の危機にひんした集落が数多くある一方、県都も高齢化などを背景にその姿を変えつつある。
2022年。「住まう」をキーワードに、高知の暮らし、営みを多面的に考えていきたい。第1部は、高知市で建設が相次いでいる分譲マンションの背景を探る。