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2021.12.27 08:00

【金正恩体制10年】対話の再開が急がれる

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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が、父親の金正日(キムジョンイル)総書記の死去に伴い、最高権力の座に就いて10年がたった。
 国内では独裁体制の権力基盤を確立した。核・ミサイル開発にまい進し、核攻撃能力の多様化を宣言するなど、国際社会にとって安全保障上の大きな脅威となっている。
 これ以上の核・ミサイルの高度化をどう防いでいくか。北朝鮮が再び交渉の席に着くよう働き掛けを強める必要がある。
 2011年12月、正恩氏は父の急死を機に20代の若さで権力を受け継いだ。経験の少なさなどから、3代目の独裁体制は持たないのでは―。当初のそんな見方は覆された。
 正恩氏は父が掲げた軍優先の「先軍政治」から、キャッチフレーズを「人民大衆第一主義」に転換した。ただ、後見人とされた叔父を処刑するなど、恐怖政治の内実は変わっていない。
 現在は妹の金与正(キムヨジョン)氏を最側近とし、抜てきした党書記ら若手参謀と結束して統治している。まだ30代であり、今後もしばらく正恩時代が続く可能性は高い。
 17年の大陸間弾道ミサイル発射で制裁を受けて、北朝鮮経済は苦境にあえいでいるとされる。
 18年に当時のトランプ米大統領と史上初の米朝首脳会談を行うなど、当初は外交に積極姿勢も見せた。正恩氏は制裁解除を狙ったものの、トランプ氏との非核化交渉は決裂。以降、米との対話に応じず、現在のバイデン政権による呼び掛けにも姿勢を変えていない。
 強く懸念されるのは、核・ミサイルの高度化を加速させていることだ。この10年で核実験を4回、ミサイル発射は60回以上も強行した。ストックホルム国際平和研究所の推計では、昨年1月時点で30~40発の核弾頭を保有している。
 今年に入り、迎撃が難しい変則軌道で飛ぶミサイルを発射するなど技術向上を誇示している。1月の党大会では実戦的な戦術核の開発と「核先制打撃」にも言及した。
 正恩氏は体制維持のため、核戦力に執着している。核関連技術のレベルが上がったことで、北朝鮮が技術を売って外貨不足を補う恐れもある。核拡散にもつながりかねない危機とも捉えられる。
 国際社会で連携して、核・ミサイル開発計画の凍結を求めるべきだ。まずは対話再開に向けた働き掛けを強める必要がある。
 北朝鮮は、日本の呼び掛けにも対話の意思を示していない。日本人拉致問題は被害者の救出がかなわないまま、高齢化した家族の死去が相次いでいる。
 今月、被害者家族会の前代表、飯塚繁雄さんも妹と再会を果たせず亡くなった。関係者は「残された時間はない」と焦燥感を強めている。
 拉致問題は近年、進展がみられない。岸田文雄首相は家族の悲痛な声を重く受け止めて、北朝鮮との直接対話の糸口を探る努力を重ねてほしい。

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