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2021.12.25 08:00

【22年度予算案】過去最大にかすむ岸田色

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 政府の2022年度予算案は、一般会計の歳出が107兆円台となった。10年連続で過去最大を更新し、4年連続での100兆円超えとなる。
 歳出の3分の1に当たる社会保障費は36兆円を突破した。診療報酬の見直しによる薬価引き下げや、75歳以上の負担増によって医療費の伸びは一定抑えられてはいる。だが、これから団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になっていく。医療や年金の社会保障費が今後も膨らむことは明らかだ。
 医療提供体制の不備が新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなった。改善を急がないといけない。看護師の賃金引き上げや不妊治療の保険適用に対応する財源も必要だ。厳格できめ細やかな対応が求められる。
 新型コロナ対策では、予備費は21年度と同額の5兆円を計上した。新たな変異株の動向をにらみ、機動的な対応ができるよう予防的に積んでおくのは理解できる。しかし、これだけの額を政府の裁量だけに委ねるわけにはいかない。透明性を保つことが不可欠だ。これまでの状況を検証することが欠かせない。
 防衛費は過去最大の5兆4千億円に増やす。中国や北朝鮮の脅威に対応し、極超音速兵器への対処研究や南西諸島の防衛力強化を図る。目安とされる国内総生産(GDP)の1%を上回る可能性がある。
 安全保障環境の変化に応じた着実な防衛力整備は責務となる。とはいえ、予算には制約があり、なし崩しは許されない。効果的な措置が取られているか冷静に判断し、国民への説明で理解を求める必要がある。
 中国の不透明な軍拡が周辺国の警戒感を高めていることは間違いない。それだけに、決定的な対立を回避するための外交努力を強めることが重要だ。
 一方、歳入の柱である税収は過去最高の65兆円台とした。新型コロナ禍からの景気持ち直しを背景に7兆円超の増加を見込む。だが、新たな変異株の動向次第では下振れしかねず、景気悪化への懸念も残る。
 そもそも国の借金に当たる新規国債の発行額は37兆円に迫る。借金の返済に充てる国債費は24兆円で、返す以上に借りていては財政の悪化に歯止めはかからない。抜本改革の道筋を明確にする必要がある。
 国債に依存する予算編成が続く中、22年度は税収増を追い風に、当初段階では2年ぶりに減額してはいる。しかし、20年度は当初の30兆円台から100兆円を超えた。21年度も膨らみ、過去分を含めた発行残高は1千兆円を超える見通しだ。
 年度途中に補正予算を組む想定をして、当初予算の見栄えをよくしているとも見える。コロナ禍からの社会経済の再生が迫られるとはいえ、安易な運営は認められない。
 当初予算案は規模が膨らんだ割に、打ち出すべき「岸田色」がいまひとつ判然としない。来夏の参院選をにらみ、施策の絞り込みが甘くなったとも指摘される。めりはりを欠いては効果への期待も薄くなる。国会で審議を尽くす必要がある。

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