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2021.12.16 08:00

【建設統計不正】徹底的な調査と検証を

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 国土交通省が毎月公表する「建設工事受注動態統計調査」が2013年度から、実態より過大になっていたことが分かった。同じ事業者の受注を二重計上するなど、不正なデータの書き換えがあった。
 この調査は政府の統計の中でも特に重要な「基幹統計」に位置付けられる。国内総生産(GDP)算出のほか、政策の立案や景気の判断などに幅広く活用されている。
 岸田文雄首相はGDPへの影響は否定したものの、政府統計の信頼は大きく揺らいだ。隠蔽(いんぺい)の意図がなかったのかを含め、徹底的に真相を明らかにしなければならない。
 調査は、全国の建設業者48万社のうち、完成工事高の規模に応じて抽出された約1万2千社が対象。都道府県が毎月、事業者から調査票を回収し、国交省が集計する。対象以外を含む建設業全体の受注動態を推計している。
 期限を過ぎた分を含め、事業者が数カ月分の調査票をまとめて提出した場合、国交省は合算して提出月の実績とするよう都道府県に指示していた。
 一方で国交省は推計作業の際、未提出だった事業者の受注実績をゼロとはせず、他の事業者の数値から受注額を推定して計上していた。このため二重に計上する形となり、受注推計値が過大になったという。
 事業者の報告をなるべく生かすための処理だったというが、生のデータに手を加えたのでは統計の生命線である正確性を損なう。本末転倒と言うほかない。
 基幹統計は統計法で指定され、調査方法を見直す場合は総務相に承認を得る必要がある。厳格さはその重要性の裏返しといってよい。違法だった可能性もあろう。
 国交省は、不適切な書き換えを会計検査院の調査で指摘され、ことし4月以降は見直したという。それにもかかわらず、長期にわたって不適切な処理を行っていた事実を公表しなかった。果たして組織的な隠蔽はなかったのか。疑われても仕方があるまい。
 基幹統計を巡っては18年12月、賃金や労働時間などの動向を把握する「毎月勤労統計」で不正が発覚している。
 従業員500人以上の大規模な事業者は全数を調査する決まりだったが、厚生労働省は東京都の事業所のうち、3分の1程度しか調べていなかった。この不正調査により、雇用保険の失業給付などが減った過少受給者は延べ2015万人に及んだ。重要統計の不正は、極めて大きな影響をもたらす。
 なぜ不適切な書き換えが行われ、そのまま見過ごされてきたのか。再発防止には、徹底的な調査と検証が求められる。
 勤労統計の不正時には、身内の厚労省職員が関係者の聴取を行い、報告書原案も作成するお手盛りの検証で、再調査に追い込まれた。そうした甘い姿勢では不正を断ち切れなかったことを、政府は重く受け止める必要がある。

高知のニュース 社説

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