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2021.12.15 08:00

【10万円給付】制度設計の甘さが際立つ

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 自治体に施策の自由度が高まることは歓迎される。それにしても、政府の方針がこれほど定まらなければ自治体に戸惑いが広がるばかりだ。
 18歳以下の子どもへの計10万円相当給付を巡り、岸田文雄首相は現金とクーポンの併用から、年内の現金一括給付を容認する姿勢へと転換した。自治体が一括給付を選ぶ場合の条件は付けないという。
 制度設計をより良いものにすると強弁しても、そのままには受け入れがたい。当初の設計と自治体との対話が不十分だったことが混乱を招いたことを認識する必要がある。
 クーポン支給の経費は現金給付を大きく上回る。自治体の事務負担は大きくなり、新型コロナウイルスの3回目ワクチン接種の準備もある。このため全額現金の要望が自治体にあった。とはいえ、変更を自治体の意向を踏まえた対応とするのはあまりに都合がよすぎる。
 年内の現金5万円給付の手続きを進めてきた自治体に困惑が広がるのは当然だ。新たにどういう対応が可能なのかを判断し、場合によっては作業のやり直しを迫られる。
 一方で、政府は5万円分をクーポンとする選択肢は堅持する姿勢も示している。確かに、地元での消費などを目的にクーポンを発行したい自治体はあるだろう。だが、この状況では政府が面目にこだわっているのではないかと映ってしまう。
 10万円給付を巡り、与党は現金とクーポンの組み合わせとともに所得制限を導入することで合意した。政府は経済対策に盛り込んでいる。
 子育て世帯は臨時の収入は貯蓄に回りやすいという。過去の給付では子育て支援と消費喚起につながらなかったと指摘される。それを回避する狙いがクーポンの導入にあった。何より根強かったのはばらまき批判への懸念だ。このため所得制限が与党間協議の焦点となっていた。
 政府は、自治体が独自の財源で所得制限を撤廃することも容認する考えのようだ。自治体の判断に委ねるのはいいことではあるが、施策の根本に関わることが相次いで打ち消されているような状況だ。
 これでは給付の政策目的が判然としなくなる。給付自体が目的化して、その効果への関心が薄れてはいないかと疑ってしまう。
 来夏には参院選が行われる。クーポンを押し通して自治体などに反発を残すより、批判を受けても変更した方が傷は浅いという見方もあるようだ。不都合があると判断したのなら改めるのはいい。問われるのは、施策を十分に検討しているかという政権の基本的な姿勢だ。
 3回目のワクチン接種を巡っては、時期を前倒しする基準が分かりにくいと自治体を困惑させた。これも準備に影響する。現場の状況を把握しないままでは混乱を強めてしまう。感染が下火ならなおさら、施策の充実を進めないといけない。
 コロナ禍で傷んだ暮らしや経済を立て直す必要がある。子育て支援や経済浮揚への持続的な対策を国会でしっかり論じたい。

高知のニュース 社説

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