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2021.12.12 08:42

ちいきのおと(50)朝倉東町(高知市)イルミネーション 心も照らす『町のサンタ』柴田さん

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まばゆい光のトンネルをくぐる親子連れら(写真はいずれも高知市朝倉東町)

まばゆい光のトンネルをくぐる親子連れら(写真はいずれも高知市朝倉東町)


「人を喜ばせたい」
 夜の帳(とばり)が降りた午後5時すぎ、1軒の民家がぴかぴか輝きだした。幻想的な光景を見に訪れた親子連れを、白ひげをたくわえた恰幅(かっぷく)のいいおじいさんが出迎える。「ゆっくり見ていきなさいや」「お菓子をどうぞ」。今年も“町のサンタ”が現れた。

 各地でイルミネーションが楽しめる時季。元運送業の柴田勉さん(83)宅では、12年前から電飾を飾っている。以前は地元の民生委員を務め、地元では知られた人だ。

 始まりは、妻の一美さん(72)が「孫を喜ばせよう」と庭木に3色に光るコードを巻いたこと。翌年も「もうちょっとやるかえ」。その翌年は「あの辺が寂しいねえ」。いつしか敷地内に10メートルほどの光のトンネルと、高さ4メートルほどの光の家ができた。サンタや雪だるま、アニメのキャラクターも増殖し、至る所で光るようになった。

目を輝かせ、スマホで写真を撮る女の子

目を輝かせ、スマホで写真を撮る女の子

 豪華な電飾に引かれ、家の門の向こうからのぞき込む人が増えた。夫妻はゆっくり楽しんでもらおうと、「中へどうぞ」の看板を出した。うわさが広がり、近所以外の人も訪れるようになった。一美さんは「こんなことになるとは思わんかったけど」と笑って振り返る。

 ◇ 

 毎年の飾り付けは、主に一美さんが考え、勉さんが準備する。

 10月には庭木の剪定(せんてい)を始め、器具を点検、配置。例年11月末から翌年1月5日まで点灯する。今年は11月25日に始め、連日午後10時ごろまで輝いている。

 12月に訪れた近所の親子連れは「毎年の楽しみ。1シーズンに何回も来ます」。別の親子は「きれいー。宝石みたい」「ここを見たら家で電飾せんでいいね」と笑い合う。

 孫娘に「キラキラのおうちに行きたい」とせがまれて来たという、近くの野村元哉さん(54)は「柴田のおんちゃんくは、東町にとってのクリスマスプレゼントやね」。

「はい、どうぞ」。子どもにお菓子を手渡す柴田勉さん

「はい、どうぞ」。子どもにお菓子を手渡す柴田勉さん

 とにかく「人を喜ばせたい」夫妻は訪れる子どもたちのために、お菓子を用意。にぎやかな声を聞きつけ、家から出てきた勉さんは「どっから? また来なさいよ」。お菓子を手渡すと、光に照らされた子どもたちの顔がぱっと輝いた。

 ◇ 

 「2人でごとごと電飾するのが幸せ」という柴田さん夫妻だが、勉さんは「年も年。作業がしんどくなってきた。今年で最後よ」。そう話していた。

 だが、点灯を始めて数日後。小さな女の子が母親と一緒に、絵と手紙を届けに来た。

 「きれいでした。また、らいねんもたのしみにしています」「コロナで気持ちまで暗くなっていましたが元気をもらえました」―。

 これを見た勉さん。「こりゃあ、うーん。来年も続けないかんねえ」。一美さんも「手の届く範囲でね」。そろって目尻を下げた。

 東町のサンタさん。これからもよろしくお願いします―。(報道部・森本敦士)


《自慢のイッピン》
貴族のように優雅に「トアルコトラジャコーヒー」
 「珈琲(コーヒー)貴族」は今年で開業30周年を迎えた喫茶店。白シャツにネクタイでぴしっと決めたマスター、菅原静雄さん(74)と次男の隆さん(46)が迎えてくれる。

 「貴族のような気持ちで楽しんで」と店内の壁や調度品は茶系で統一され、優雅な雰囲気。コーヒーカップは静雄さんの妻、幸子さん(72)が集めた約300個の中から、「お客さんの雰囲気に合った」絵柄の物を選んで提供している。

 売れ筋はブレンド(税込み500円)で、一押しは、「幻のコーヒー」と言われたトアルコトラジャ(同720円)。深いコクとスッキリした酸味が楽しめる。

 サンドイッチセットもあり。営業は午前7時半~午後4時。月曜、第1火曜定休。


《あの日あの時》1998年
町内一の大声競う
 子どもも大人も計測器付きマイクに向かって「わあああっ」。朝倉市民会館で1998年に開かれた「フェスティバルそがやま」の一こま。大声を競う愉快な催しに老若男女の笑みがこぼれた。

 地域にある曽我山公園にちなむ「フェス―」は町内会や近隣の小中学校などでつくる実行委員会が、92年から2011年まで毎年8月に開いていた。出店に盆踊り、子ども相撲…。すべて住民手作りのイベントだった。

 開始当時を知る同会館館長の森本稔彰さん(70)は「町内のお祭りが廃れゆく中、みんなが一つになれる時間をつくろうと始めた」と振り返る。その後、メンバーの高齢化などで終了したが、「にぎやかで、地域で子どもを育てる場でした」と懐かしんだ。


《ちょっとチャット》
松岡萌南さん(8)朝倉第二小3年
 東町には公園が多くて、毎回違う場所で遊べるき、楽しい。“木の公園”によく行きゆうよ。最近はダンスと硬筆の教室が忙しくて遊べんけど、休みの日には妹を連れて行っています。大きくなったら、お母さんがやっている焼き鳥屋さんで一緒に働きたいなあ。お母さんの作る焼き鳥はおいしいんです。




 朝倉東町は鏡川の南側、高知大学朝倉キャンパスの東に位置。一帯はかつて田んぼが広がっていたが、現在は北部が住宅街、土佐道路に面した南部は量販、飲食、服飾などの商業施設が並ぶ。2021年11月1日現在、641世帯1092人。

高知のニュース 高知市 街ダネ ちいきのおと

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