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2021.11.12 08:00

【高齢者事故対策】免許手放せる環境整備を

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 警察庁は、高齢ドライバーの事故対策を盛り込んだ改正道交法を来年5月に施行することを決めた。
 一定の交通違反歴がある75歳以上の人が免許を更新する際、運転技能検査(実車試験)を義務付ける。更新期間中は繰り返し受検できるが、最終的に不合格だと更新できない。
 安全にハンドルが握れるレベルの運転技能が維持できているのかどうか。実際に運転して確かめる。事故防止の観点からはやむを得まい。
 この検査は、免許の更新通知が届いた時点から過去約3年間に、認知機能が低下した際に起こしやすいとされる信号無視など11種類の交通違反のうち、一つでも違反歴がある75歳以上を対象とする。
 一時停止や右左折などの課題が出されて運転し、合格すれば認知機能検査を受ける。認知症の恐れがないと判定されると、高齢者講習を受けた後に免許が更新される。
 違反歴に着目した事故抑止策で、2009年に認知機能検査が導入されて以来の踏み込んだ高齢者対策となる。
 年間約15万人が検査対象となり、約2割の人が初回の受検では不合格になると見込まれている。
 19年の池袋暴走死亡事故をはじめ、高齢ドライバーによる重大事故は後を絶たない。あらゆる対策でリスクを減らすことが、社会の要請であることは間違いない。
 死亡・重傷事故を起こした高齢者が過去に交通違反を繰り返していたケースも少なくない。
 ただし、この検査はこれまで運転してきた一定数の人について免許の失効につながることは避けられない。個人の移動の自由にかかわる側面もある。警察庁には制度の公平性を保ち、慎重な運用が求められる。
 法施行に伴い、自動ブレーキなどの先進安全機能を備えた「安全運転サポート車」だけを運転できる限定免許も導入される。
 希望者が申請すれば普通免許から切り替えられる。事故発生のリスクを下げながら車の運転が維持できる選択肢として注目される。
 完全自動運転の実現にはまだ時間を要するだろうが、技術の実用化に応じて事故防止に生かす対応が求められよう。
 交通事故の加害者になりたくない―。池袋の事故以降、そう考えて免許を自主返納する人は増えた。
 誰もが加齢による視力や身体機能の低下は避けられない。一方で、本県のように公共交通手段に乏しく、車社会の地方では「免許は生活に欠かせない」という声も切実だ。
 「車がないと生きていけないが事故を起こすかも、と悩む人たちをどう救済するのか。国や自治体にできることはたくさんある」。池袋の事故で妻子を亡くし、事故防止活動に取り組む遺族も訴えている。
 今後も高齢ドライバーの増加が見込まれる。運転できなくなった人の代替交通手段の確保に本格的に取り組む必要がある。高齢者がスムーズに運転から「卒業」できる環境整備が求められている。

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