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2021.11.05 08:00

【RCEP発効へ】経済連携を地域の安定へ

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 地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が来年1月1日に発効することになった。
 日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など計15カ国が加盟する。関税削減や統一ルールで自由貿易を促進し、アジア太平洋地域での貿易や投資の拡大につながることが期待されている。
 15カ国の合計した国内総生産(GDP)と人口はそれぞれ世界の約3割を占める。最大級の経済圏が誕生することになる。
 日本にとっては、最大の貿易相手国である中国と3位の韓国との初めての経済連携協定(EPA)ともなる。政府は協定発効に伴う国内経済効果を、実質国内総生産(GDP)を約2・7%押し上げ、雇用は約57万人相当増えると試算している。
 多国間にまたがるビジネスを展開する日本企業は、事業の効率化による業績の向上をにらむ。新型コロナウイルス禍が浮き彫りにしたサプライチェーン(供給網)の強化につなげていくことも課題となる。
 日本から輸出する工業製品にかかる関税は段階的に引き下げられ、最終的には品目ベースで92%が撤廃される。これまで自由貿易の枠組みがなかった中国や韓国向けは大幅に拡大されることになる。加盟国全体での撤廃率は91%となる。
 環太平洋連携協定(TPP)では日本の撤廃率は95%で、他国はさらに高く設定している。TPPは経済力が比較的高い国の参加が多い。このため自由化の水準がTPPより低くなった。新興国の国内事情に配慮し、RCEPの交渉決裂を回避した結果だという。
 一方、日本が輸入する商品の関税も下がるが、農林水産品の撤廃率はTPPより大幅に低く設定されている。コメや麦など農産物の重要5項目は関税の削減、撤廃の対象から外した。国内産業をいかに守るかは引き続き重要な論点だ。
 RCEP協定は中国が入る協定では初めて、国が進出企業への技術移転を要求することを禁止した。また、電子商取引(EC)や商標を含む知的財産保護も一定の国際ルールが適用される。
 中国が多国間の貿易体制に加わる意義は大きい。ただ、協定には中国の過度の補助金が問題視される国有企業や環境、労働に関する規定は設けられていない。これらの対応は怠れない。一方で中国は存在感を高めながら、自国に有利な貿易ルールを形成する狙いもうかがえる。協定の履行状況を注視したい。
 また、中国が申請したTPP加盟の判断にも影響するとみられている。台湾もTPP加盟を申請し、東アジアの経済安全保障の焦点となっている。米国はトランプ前政権下に自国産業保護を名目に離脱しており、中国がここでもルールづくりを主導したい思惑が指摘される。
 米中対立が続く中、日本は中国との関係を安定的に継続させることが求められている。日本の役割は大きい。経済的なつながりを地域の安定へとつなげていくことが重要だ。

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