2021.10.25 08:00
【食物アレルギー】子どもの健康守る連携を
特に食物アレルギーの事故が絶えない給食を念頭に置いている。保護者の経済的負担を減らし、学校や保育所と連携して適切な対応を促したい。
厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会に提案し、大筋で了承された。厚労省は来年4月の診療報酬改定に向けた調整を進める。
食物アレルギーの子どもは増加傾向にある。鶏卵や牛乳、小麦、木の実類といった原因食材の摂取で、じんましんや腹痛、嘔吐(おうと)などの症状が出る。
多くが乳幼児期に発症し、国内の実態調査では1歳児の8%弱に症状が見られる。小学校入学までに治るケースも多いが、個人個人で重症度も異なるため、専門医の正確な診断を受けることが欠かせない。
「生活管理指導表」は、個別のアレルギー対応の指針となる文書だ。医師が診断に基づき、原因や生活上の留意点、全身に急激な症状が出てしまう「アナフィラキシー」の有無などを記入する。
食物アレルギーでは、原因食材を食事から除去することが対応の基本だ。しかし、全国の保育所や学校で、給食の調理ミスや配膳の不注意による誤食の事故が起きている。
2012年には東京都内の小学校で、乳製品にアレルギーのある子どもがチーズ入りの給食を渡されて食べ、アナフィラキシーショックの疑いで死亡している。
このケースでは、担任と調理員の連絡不備などが指摘された。給食のアレルギー対応は子どもの命にもかかわる。関係者の情報共有と細心の注意が欠かせない。
一方、保護者から「生活管理指導表」が提出されず、アレルギー対応の指針がないまま、保育所や学校が対応に苦慮する場合もあるという。
医師に作成を依頼すると、文書代に数千円かかるためだ。金額も医療機関ごとにばらつきがある。
これに保険を適用し保護者の負担が軽くなれば、保育所や学校が提出を求めやすくなるだろう。厚労省が推奨する毎年の「生活管理指導表」更新もハードルが下がる。
アレルギーの研究は著しく進歩している。古い知識に基づく自己判断は症状を悪化させかねない。
自治体は乳幼児の保護者に最新の情報を提供し、積極的な受診を呼び掛けるべきだ。保育所や学校関係者の研修も充実させ、給食の事故防止にも一層努めなければならない。
養護教諭を対象にした19年度の文部科学省の調査によると、配慮や管理を要するアレルギーの児童生徒が自校にいると答えた割合は9割近くに上った。
アレルギーがあることを理由にした嫌がらせやいじめも問題になっている。学校生活の中で子どもがアレルギーの正しい知識を学び、理解を深めることも重要になっている。