2021.09.09 08:00
小社会 キラキラネーム
例えば昭和初期から20年代にかけて生まれた女性に最も多いのが「和子」。「和」は「昭和」や「平和」の一文字でもある。はやりの名前でも、時代背景が分かり、親の子への思いが伝わってくる。
常用漢字では「和」に「かず」という読みはないが、既に江戸時代に使われていたようだ。これを当時、国学者の本居宣長が「『かず』と読むのは間違いである」旨の苦言を呈したという。文筆家の伊東ひとみさんが著書で紹介している。
国の法制審議会が、現在漢字で記されている戸籍の名前に読み仮名を記載するための検討を始める。海を「マリン」、男を「アダム」と読ませるといった「キラキラネーム」をどこまで認めるかも論議する。
名付けを巡る問題といえば、かつての「悪魔」ちゃん騒動を思い出すが、キラキラネームの問題は名前自体の善しあしとは違う。読みにくいとの批判は昔の名前にも当てはまるから論議が難しい。一方で、伊東さんは漢字がイメージや感覚で捉える「『感字』になりかけている」と心配する。
名付けは親としての喜びであり、責任でもある。はやりはあるにしても、名付けに重みがなかった時代だったとは言われたくない。古くて新しい名前を巡る問題。じっくりと議論したい。