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2021.06.17 08:00

小社会 おためごかし

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 最近はもう、あまり聞かれなくなった。「おためごかし」。ドイツ文学者の故池内紀(おさむ)さんは、この言葉に一つの記憶がまといついている。

 旧家の生まれで父親は教師の傍ら、地域の役員もしていた。人の出入りは多かったが、父が病死した後はぱったり。親戚付き合いもなくなり、たちまち生活に行き詰まる。そこに一人の紳士が現れ、母親に優しい言葉を掛けて所有地を売るように勧めた。

 説得されて売ったものの、その土地は後に市の住宅開発用地となり値が何倍もに急騰した(「ことば事始め」)。相手のためになるように見せかけて自分の利益を図る。池内さんにとっておためごかしは、母親が自分の愚かさを責めて泣いた姿とともに、心に刻まれたのだろう。

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社に、かの紳士の姿が重なる。顧客の利用実態に合わない高額プランの勧誘を助長している懸念があるとして、公正取引委員会から行政指導された。

 待望の低料金プランも、各社はオンライン手続きに特化。ネットに不慣れなお年寄りらには難しく、低料金プランの契約は一部にとどまる。これではおためごかしと言われても仕方あるまい。

 言葉としては死語になりつつあるとしても、おためごかし自体はなくならないと池内さん。政治とカネや接待問題を巡る政治家、官僚、企業幹部らの振る舞いを見れば、さもありなんである。


6月17日のこよみ。
旧暦の5月8日に当たります。ひのえ さる 九紫 赤口。
日の出は4時55分、日の入りは19時18分。
月の出は10時58分、月齢は6.7です。
潮は小潮で、干潮は高知港標準で4時27分、潮位101センチと、16時44分、潮位47センチです。
満潮は9時53分、潮位149センチと、23時38分、潮位160センチです。

6月18日のこよみ。
旧暦の5月9日に当たります。ひのと とり 一白 先勝。
日の出は4時56分、日の入りは19時18分。
月の出は12時01分、月の入りは0時15分、月齢は7.7です。
潮は小潮で、干潮は高知港標準で5時42分、潮位95センチと、17時46分、潮位58センチです。
満潮は11時15分、潮位143センチです。

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