2002.02.11 12:10
土佐の果物語(3) 第1部 (3)天の恵み 味の秘密は川と土
「あまり気温が高いと、木は呼吸するのがようよう(やっと)で、実を太らす余裕がのうなる。そよそよした川風が吹くと木に無理がこんから一番えい。昼間は暑うても夜涼しい風が吹くとナシの木の活動が激しゅうなって実も太る」
つまり仁淀川の川風がそよそよと伝わって、ナシに絶妙の生育環境を与えてきたという見方だ。そういえば高岡郡佐川町、吾川郡伊野町、春野町など県内主産地の多くが仁淀川など河川に沿っている。
もう一つ、忘れてならないのが土づくりだ。一年単位でできるものではなく、十年、二十年の長い期間が必要とか。試行錯誤しながら土をつくる、目に見えない農家の努力がその園ならではの果実の味を生み出している。
例えば、川渕さんの四十アールの園でも場所ごとに石まじりのやせ地であったり、粘土質であったり土質が違う。
やせ地はナシ、ミカンなどの果実やサツマイモなどにとってプラスに働くらしい。県農業技術課の西本年伸さんによると、光合成で蓄えられた養分は枝や葉に取られるが、やせ地だと成長がしにくい。その分、養分が果実に回っておいしさを増す。
しかし、それだけではない。果樹試験場落葉果樹科長の木村和彦さんが言う。
「ナシ作りは、水はけが良くて水もちがいい土地が適しています」
一見すると矛盾するようだが…。
「川渕さんの園でいうと、ダケ土(粗い山の土)に有機物の肥料をたくさん入れています。それによって水もちの良い層を作るんですね。でも下はダケ土なので余分な水は抜ける。粘土質の層の場合は肥料を入れることで土中に空げきを作る。その空げきに水が染み込むんです。そうやって土壌を改善しているんですね」
川渕さんの園。靴がムニューと入り込むほど土がふかふかだ。(経済部・竹村朋子)