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2021.10.16 08:00

【コロナ補助金】病床確保の効果検証を

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 新型コロナウイルス患者の病床を確保するため、政府が投入した補助金の実効性が問われている。
 財務省の分析で、2020年度にコロナ病床確保の補助金を受け取った医療機関の収支が、コロナ前と比べて大幅に改善していたことが分かった。
 だが、流行「第5波」では病床が逼迫(ひっぱく)した。自宅療養者は最大で13万人を超え、入院先が見つからないまま亡くなる人も相次ぐなど、医療崩壊といえる事態に陥った。
 補助金は果たしてコロナ患者の受け入れ拡大に有効だったのか。問題点の検証を第6波への備えにつなげなければならない。
 補助事業は、20年12月から今年9月末まで行われた。医療機関が新たに確保した病床数に応じ、1床当たり最大1950万円を補助した。財務省は対象となった医療機関を分析した。
 その結果、医療機関が受け取った補助金は平均10億1千万円だった。20年度は平均6億6千万円の黒字で、前年度の2千万円から大幅に増えた。受診控えなどによる減収分を補助金が上回り、経営状況が軒並み改善した格好だ。
 しかし、肝心のコロナ患者受け入れで、額面通りの効果があったかには疑問符が付く。
 94の国立病院に絞って収支データを分析したところ、ある病院は14億円余りを受け取りながら、受け入れ患者数は25人にとどまっていた。患者1人当たりの補助金が5916万円という計算になる。必ずしもスムーズな受け入れにつながっていない現実が浮かび上がる。
 これまでの流行で最も感染状況が厳しかった8月下旬でも、東京都内の病床使用率は60%台にとどまっていた。症状が悪化しても入院先が見つからない「医療難民」が多発したことは記憶に新しい。
 その原因の一つとして、多くの専門家が「幽霊病床」の存在を指摘する。補助金を受け取り、数字上はコロナ患者に即応できるはずだが、機能していない病床だ。
 コロナ患者を受け入れるには、通常の患者より多くの労力を必要とする。ベッドは確保できても、実際に治療に当たる医師や看護師らに受け入れを増やす余力があったのか。現場には疑問の声も根強い。
 疲弊する医療現場に病床上積みを求めるなら、ベッドと医療人材の確保を一体的に支援する必要があったのではないか。
 財務省には制度設計が甘いとの指摘もあり、厚生労働省は「正当な理由」がなく受け入れが不十分なら補助金の返還を求めると、都道府県に既に伝達している。
 ワクチン接種が進んだこともあり感染状況は下火になっているが、第6波は不可避と予測する専門家も多い。現場の状況に即した対策を取らなければ、医療の疲弊や逼迫が繰り返されることになりかねない。
 自治体や医療機関、医師会などが知恵を出し合い、地域の実情に応じた体制づくりを求めたい。

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