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2021.09.08 08:00

【IR実刑判決】また政治の信頼が揺らぐ

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 公人としての倫理観はおろか、最低限の順法精神すら欠如している。裁判長が現職の国会議員に投げつけた厳しい言葉が、事案の特異さを物語っているようだ。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で、収賄と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の罪に問われ、無罪を主張した衆院議員、秋元司被告=自民党を離党=に、東京地裁は懲役4年、追徴金約758万円の判決を言い渡した。
 判決では、IR担当の内閣府副大臣などを務めた2017年9月~18年2月、IR事業参入を目指した中国企業「500ドットコム」側から計758万円相当の賄賂を受け取った。
 秋元議員は賄賂の受領を否定していた。しかし裁判長は、贈賄側の供述は客観的証拠に強く裏付けられ、十分信用できると指摘した。
 また判決は、保釈中の昨年6~7月に知人らと共謀し、贈賄側に虚偽の証言を依頼して、報酬として現金の提供を持ち掛けたと認定した。
 裁判を有利に進めようとした疑惑だ。裁判長は秋元議員の主張を退け、「前代未聞の司法妨害」と指弾した。裁判の公正性を損なわせる行為に強い憤りを示した。
 秋元議員は議員辞職をしていない。次期衆院選に立候補する姿勢さえ示してきた。それならば、司法の場での主張にとどめず、保釈中に国会で証言して疑惑を晴らす姿勢を見せることもできたはずだ。国会軽視と取られても仕方ない。
 IRは安倍前政権が成長戦略の柱に位置付け、18年にはIR整備法を成立させた。菅義偉首相は前政権の官房長官としてもIRを促進してきた。そうした中で業者との癒着や政界工作が吹き出した疑惑であり、両政権はしっかりと向き合う必要があったが、納得される対応をしてきたとは言えない。
 カジノやホテル、劇場などを一体的に整備するIRは、観光客を呼び込み雇用創出や税収増の効果を見込む。これに対し、ギャンブル依存症の増加や治安悪化を心配する意見も根強い。
 十分な説明と慎重な検討を重ねて事業への懸念を解消しなければ、地域の分断につながりかねない。先の横浜市長選ではIR誘致を巡り、菅首相は反対に転じた小此木八郎前国家公安委員長に肩入れした。これでは首相がIRをどうしたいのか、位置付けが分かりにくくなる。
 「政治とカネ」の問題が後を絶たないことを真剣に受け止めなければならない。
 河井克行元法相は、参院選を巡る公選法違反罪で一審は実刑判決を受けた。菅原一秀前経済産業相は、地元有権者に現金を配布したとして同罪で略式命令を受け有罪が確定した。吉川貴盛元農相は鶏卵汚職事件で収賄罪に問われている。
 「桜を見る会」前日の夕食会費用の補塡(ほてん)問題もくすぶったままだが、解明への動きは鈍い。
 反省の弁はあっても不祥事は繰り返され、政治への信頼が失われてきた。菅政権の課題は継承される。

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