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2021.09.06 08:00

【東京パラ閉幕】感動を変革の原動力に

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東京パラリンピックが13日間の日程を終えて閉幕した。
 161の国・地域と難民選手団の選手約4400人が参加し、22競技で障害者スポーツのトップアスリートたちが競い合った。
 高知県勢はきのう、バドミントンの藤原大輔選手が杉野明子選手と組んだ混合ダブルスで銅メダルを獲得した。シングルスは惜しくも4位だった。気持ちを立て直し、大一番によく力を発揮した。
 車いすラグビーの池透暢(ゆきのぶ)選手も激闘の末、銅メダルを高知に持ち帰った。カヌーの小松沙季選手は競技歴は短いながら堂々の戦いぶりだった。県民の誇りである3選手に拍手を送りたい。
 新型コロナウイルスの感染拡大が「災害級」と言われる状況下、全会場で原則無観客の開催となった。それでもテレビ観戦を通じて人々に与えた感動は大きかった。
 例えば、競泳で二つの銀メダルを獲得した14歳の山田美幸選手。両腕がなく、長さの違う両脚を使って圧巻の泳ぎを見せ、「障害は個性」と話した。困難を乗り越え、限界に挑む姿に感嘆した人は多いだろう。
 頸髄(けいずい)損傷や脳性まひといった重い障害がある選手が出場するボッチャでは、磨き上げた投球の精度でうならせ、健常者も含めて楽しめる競技の魅力を伝えた。
 パラアスリートの躍動は、人間の限りない可能性を感じさせた。全選手の健闘をたたえたい。
 今後は、東京パラから受けた感動を原動力として、障害者のさらなる社会参加を目指し、日本社会の意識や仕組みを変革する必要があろう。
 東京五輪・パラを契機に、日本では公共交通機関や宿泊施設などのバリアフリー化が進んだ。ハード面での効果が表れた一方で、障害への理解を進める、いわゆる「心のバリアフリー」は不十分なままと言わざるを得ない。
 日本社会では依然、障害者と健常者が日常的に接する機会が少ない。そのことが時に「溝」を生み、差別や偏見も生んでいるとされる。
 海外では、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」が広く取り入れられている。社会の多様性を知り、人権の大切さを学ぶ教育である。日本でも推進したい。
 国際パラリンピック委員会(IPC)は東京パラを契機に、今後10年間続ける活動を開始した。世界人口の15%に当たる約12億人の障害者の人権を守るキャンペーンである。
 背景には、黒人差別や性的少数者への問題提起が世界的に広がる一方で、障害者への差別や偏見をなくす取り組みが不十分との認識がある。
 教育や雇用機会の喪失、貧困など障害者の抱える問題に目を向け、解決していくことが欠かせない。障害者が何に困り、どんな仕組みを求めているのか。理解を進めていくことが変革の第一歩になる。
 障害者が生きやすい社会は、誰もが生きやすい社会に通じているはずだ。東京パラのレガシー(遺産)を大きく育てていきたい。

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