2021.09.03 08:00
【概算要求】コロナは免罪符ではない
2022年度予算編成に向けた各省庁からの概算要求が締め切られ、一般会計の要求総額は111兆円と4年連続で過去最大となった。
新型コロナウイルス対策で歳出が一定膨らむのは避けられないとはいえ、決して財政規律の緩みに対する免罪符にはならない。政策効果を重視した精査を求めたい。
財務省は概算要求にあたり、コロナ関連以外は枠をはめて要求段階から管理する基準を設けた一方、脱炭素やデジタル化などの成長分野に重点配分する「特別枠」を2年ぶりに復活させた。
コロナ対策費は感染の収束が見通せない現状を踏まえ、21年度に引き続き予算額は示さない事業内容だけの要求も認めた。今後の査定で削られるとしても、22年度予算案が過去最大に膨らむ可能性は高いと言わざるを得ない。
政府と地方の借金は、国債や借入金を合わせ約1200兆円、国内総生産(GDP)の約2・2倍で、先進国でも突出して多い。財政状況は年々、硬直の度を増している。
高齢化が進み、医療や介護などの社会保障費は増え続けている。団塊の世代が後期高齢者の75歳以上になり始めるため、21年度からは6600億円の増加を見込み、31兆8千億円に達した。
税収不足を補うために発行した国債の償還や利払いに充てる国債費も前年度より6兆5千億円増えた。過去最大の30兆2千億円に膨らみ、歳出全体の3割近くを占める。
これまでの財政運営のつけや社会構造による制約の中、限られた予算で問われるのは事業効率にほかなるまい。1年半に及ぶコロナ禍はそうした問題点を浮き彫りにした。
例えば、コロナ対策で要請された営業時間の短縮で、飲食店に支払われる協力金だ。感染「第3波」への懸念が高まった昨年11月に始まった支援事業は、予算額が当初の500億円から感染拡大に伴って3兆6千億円まで増えている。
しかし、支給の遅さがずっと問題視され、予算規模ほどの効果があったかには疑問が残る。「予算規模ありき」ではなく、現状に応じて執行できる効果的な事業運営が求められる。それはコロナ対策に限るまい。
新型コロナ感染拡大を受け、政府は追加経済対策をまとめる意向も示している。概算要求で集まった事業の一部を21年度補正予算に組み込み、22年度予算を圧縮することもあり得るという。見た目を整える小手先の対応で、危機的な財政状況が本質的に変わるわけはない。
菅政権は経済財政運営の指針である骨太方針で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を25年度に黒字化する目標を堅持した一方、目標年度を再確認する姿勢も示している。
一度緩んだ規律を締め直すのは容易ではない。コロナ対策での財政出動が必要な今こそ、「出口」をにらんだ厳しい姿勢が求められる。