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2021.08.23 08:00

【女性の健康支援】誰もが働きやすい社会を

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月経や妊娠、更年期に伴う女性の健康課題を最新技術で解決する「フェムテック」が注目を集めている。
 フェムテックとは、female(女性)とtechnology(技術)を合わせた造語だ。新分野のビジネスとして、多くの企業や医療機関が乗り出している。
 経済産業省も普及に向け、本年度から実証事業を始めた。職場で相談しにくい女性特有の不調による離職を防ぎ、キャリア形成を支援することが狙いだ。
 従来はタブー視されがちで、見過ごされてきた負担の軽減が期待できる。女性の健康課題に対し、職場の理解を広げていく必要がある。
 女性の体調はホルモンの影響で周期的に変化する。妊娠・出産や更年期などライフステージごとに直面する体の悩みもある。
 女性の社会進出が進み、それらの健康課題による損失は大きくなっている。例えば、月経に伴う症状で会社を休む、労働量や質が低下するといった労働損失は国内で年間4900億円を超えるとの試算もある。
 フェムテックに関連した製品やサービスの裾野は広く、2025年には世界で5兆円規模の市場に成長すると見込まれている。
 例を挙げれば、欧米発祥の生理用品「吸水ショーツ」は特殊繊維を使い、経血を吸収するのでナプキンが要らない。洗って繰り返し使え、経血漏れの不安からも解放されると人気が出ている。
 ほかにも妊活用のスマートフォンアプリや、更年期のオンライン相談なども支持されている。国内企業もフェムテックに次々と参入しており、経産省は今回、20の事業を選定して費用の一部を支援する。
 注目すべき事業として、不妊治療の遠隔診療が挙げられる。本県など地方では生殖医療の専門医が少なく、時間と交通費をかけて県外に通院する場合も多いことに着目した。
 厚生労働省の17年の調査によれば、不妊治療と両立できず仕事を辞めた人は16%、治療をやめた人が11%、雇用形態を変えた人は8%に上る。女性がキャリアなどを犠牲にしている実態がある。遠隔診療の仕組みが広がれば、現状を一定改善できる可能性もある。
 このほか、仕事と安全な妊娠・出産を両立させる遠隔医療技術の実証事業や、乳がん手術後の女性がストレスなく着けられる胸パッドの開発事業なども選ばれている。
 フェムテック普及が性差への理解を広げ、女性が生きやすい社会に変わる動きを生むよう期待したい。
 企業が福利厚生の一環として、フェムテックを取り入れる例も増えている。技術革新やビジネスの新機軸を生むには、多様な人材を確保し、能力を生かすことが鍵とされる。女性が働きやすい環境づくりを進めることは経営戦略と言える。
 女性だけではない。障害者や病気治療中の人ら特有の健康課題がある場合でも、負担軽減を図りながら働き続けられる環境が必要だ。誰もが働きやすい社会を実現させたい。

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