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2021.06.25 08:00

【夫婦同姓「合憲」】国会は議論から逃げるな

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 夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は憲法に反するのか。東京都内の事実婚の夫婦が起こした家事審判の決定で、最高裁大法廷は2015年の同種訴訟の判決に続き「合憲」との判断を示した。
 その上で、制度の在り方については「憲法違反の審査とは次元が異なる。国会で論ぜられ判断されるべきだ」として、立法における議論を改めて促した。
 最高裁は前回15年にも促したが、政府や国会は対応してこなかった。司法からの再度の指摘を重く受け止め、法改正に向けた議論を速やかに始めなければならない。
 民法750条は、夫婦は結婚前のどちらかの姓に統一して名乗ると規定する。戸籍法では夫婦の姓を定めなければ婚姻届が受理されない。
 今回審判を申し立てた事実婚の夫婦3組は、別姓での法律婚を希望したが、受理されなかった。
 大法廷の裁判官15人のうち、11人が「合憲」と判断、4人が「違憲」との意見を表明した。
 15年は5人が「違憲」だった。夫婦別姓の選択肢がないことを憲法違反とする意見が、最高裁判事の中にも一定あるということだ。
 今回、最高裁は決定理由で「社会の変化や国民の意識の変化といった諸事情を踏まえても、15年の大法廷判決の判断を変更すべきとは認められない」とした。
 15年の判決は、夫婦同姓が社会に定着していると指摘した。実際には妻の改姓が圧倒的に多く、不利益があることを認めたが、「旧姓の通称使用によって一定程度緩和できる」とした。
 前回から5年半が経過し、夫婦同姓か別姓かを選べる「選択的夫婦別姓」制度を求める声は強まった。
 内閣府の17年の世論調査では、導入容認が42・5%と過去最多になった。共同通信が今年3~4月に行った調査では、賛成が60%に上った。
 地方議会でも別姓導入や国会審議を求める意見書の採択が相次ぎ、県内でも15市町村以上に上っている。
 2回目の憲法判断も再び国会にボールを投げた形になった。司法の限界を示したとも言えよう。
 1996年の法制審議会で、選択的夫婦別姓制度を含む民法改正が答申されてから四半世紀。国会審議されない「たなざらし」の間に、どれほど多くの人が夫婦同姓の義務に葛藤し、不利益や苦痛を受けてきただろうか。将来世代に強いることを避けなければならない。
 政府は昨年末に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」で制度導入に前向きな記述を検討したが、自民党内の反対派が猛反発し「夫婦別姓」の文言自体を削除した。
 世論の高まりを裏切る対応だった。今回の「合憲」判断を受けて、政府や自民党内でさらに議論が先送りされることを懸念する。
 同制度は夫婦同姓を選びたい人の権利も保障している。導入に向けた議論を進めるのは政治の責務だ。社会の変化に背を向けるような対応は許されない。

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