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2021.04.30 08:00

【学術会議改革】政府の下請けにはできぬ

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 日本学術会議の会員への任命を菅義偉首相に拒否された学者たちが、理由を明らかにするよう内閣府に情報開示請求した。
 会員候補の6人は安全保障関連法や、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設を巡る政府対応などを批判してきた。それを受けた恣意(しい)的な人事であるなら、学問の自由を脅かす不当な政治介入である。
 政府がだんまりを決め込むことは許されない。開示請求に応じるべきである。
 拒否の理由について菅首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求める観点から」と述べたほか、会員の出身や大学に偏りがあるとするなど説明が二転三転した。一方で、6人が政府方針への反対運動を先導する事態を懸念したためだ、とする政府関係者の発言も報じられている。
 真実はどうなのか。核心部分の解明を脇に置いたまま、政府は学術会議の年間約10億円の予算などへの疑問をちらつかせ、組織のあり方の見直しを打ち出した。論点ずらしと言うほかない。自民党は独立行政法人などへの移行を求めているが、そうなると政府の関与が強まる恐れも指摘されている。
 学術会議側は国を代表する学術団体「ナショナルアカデミー」として、「公的地位」「活動面での政府からの独立」「財政基盤」などの要件を満たす必要性を指摘。現在はすべて満たしており、組織形態を変更する積極的な理由はないとする報告書をまとめた。
 自民党は「現状維持で改革に消極的」と批判するが的外れだろう。
 学術会議が国からの独立を重視するのは、科学者が太平洋戦争に協力したことへの強い反省からだ。政府方針に反することでも堂々と提言し、政府もそれに真摯(しんし)に向き合う。そうすることが社会の利益につながるのは言うまでもない。
 独立性と財政基盤の確立は科学の知見を社会に生かすために不可欠であり、学術会議がそれを求めるのは当然である。
 任命拒否問題が発覚して半年余り。ナショナルアカデミーと政府とのせめぎ合いが続くことは、国にとって有益ではない。学術会議の梶田隆章会長は「新型コロナウイルス対応をはじめ他の審議が滞っている」と、活動に影響が生じていることを認めている。
 感染症対策を進める上でも、現状の政治と科学の対立は百害あって一利なしだろう。
 学術会議は先ごろ開いた総会で、任命を拒否された6人の即時任命を求める声明を出した。拒否の撤回を求める6万1千人分の署名も内閣府に提出されている。
 事態を打開するにはこうした動きも踏まえて、政府がまず任命拒否の理由を説明し、拒否を撤回しなければならない。その上で、学術会議のあり方に見直しが必要な部分があるなら協議するべきであろう。
 学術会議が政府の「下請け機関」となるような改革は、決して認めることはできない。

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