2002.02.11 12:20

土佐の果物語(2) 第1部 (2)名人 老木に1000個の実り

新高ナシ作りに励む川渕さん。「ナシの木の顔が読める人」である(高知市針木北)
新高ナシ作りに励む川渕さん。「ナシの木の顔が読める人」である(高知市針木北)
 「新高ナシ園を見たこと、ありますか」

 坂道を上る車窓の左右にナシの木々を見ながら、高知市針木の農家、川渕知巳さん(76)が静かに口を開いた。

 川渕さんが新高ナシを作り始めたのは終戦直後。東京の近衛師団から針木に戻った時、近所の先輩が作っているのを見たのがきっかけだった。

 「サツマイモや大根、ジャガイモを作りながらナシの木を一本ずつ買うていきました。いろいろな先生や果樹試験場にもお世話になって、私なりの作り方を身に付けてきました」

 遠くに高知市内のビル群が見える。山頂にある川渕さんの園に入ると、棚状になった木が四方八方に枝を伸ばしていた。

 「あの木は樹齢二十年、こっちは三十年。あれは五十年になりよります」

 半世紀を生き抜いてきた木! 川渕さんの指を目で追うと、ナシ園の真ん中に三本の枝に分かれた大きな木があった。幹周りは一・三七メートル。今も一千個の実をつけている現役だ。

 果樹試験場落葉果樹科長の木村和彦さんは「ナシの木は十年までは幼木で味もそれほど乗ってこない。十年から三十年が人間でいう働き盛り」と言っていた。加えて、

 「三十年もたつとその園主ならではの味、奥深さが出るんです。それぞれの園に個性があって、それぞれ顧客がつく。川渕さんは自分の園の土がどれだけ肥料や水を欲しがっているか、一本一本の木の個性を知っている。ナシの木の顔が読める人です」

 それに針木という土地柄がプラスする。この地だからこそ、おいしい新高ナシが育つらしい。川渕さんに尋ねてみる。どうして、おいしいナシができるの?


 「まあ、仁淀川の風があるからやろねえ」

 仁淀川は針木の西約三、四キロを流れている。その川風とナシにどんな関係があるのだろう。(経済部・竹村朋子)

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