2002.02.11 12:30

土佐の果物語(1) 第1部 新高ナシ編(1)王様誕生

新高ナシの母、新潟県原産の「天の川」。繊細な美しさが漂っている(高知市朝倉丁の県農業技術センター果樹試験場)
新高ナシの母、新潟県原産の「天の川」。繊細な美しさが漂っている(高知市朝倉丁の県農業技術センター果樹試験場)
両親ともに美しく
 高知市朝倉。住宅地を眼下に見下ろす小高い山に県農業技術センター果樹試験場が立っている。土地の小字(こあざ)は城山(じょやま)。名の通り、一帯は戦国時代に本山氏の居城だったことで知られている。

 秋風がゆっくり吹き渡る敷地内に、約二十本のナシの木が植えられていた。山形県の特産でひょうたん形のラ・フランスや中国原産の雪花梨(せっかり)…。この中に、新高ナシの両親が向かい合うように枝を伸ばしている。

 「こちらが父親の今村秋です」。試験場の又川浩司さんが実にかぶせてある新聞紙をガサガサとはがしてくれた。黄色が見えた。「あ、きれい」。心の中で声をあげた。先端は丸みを帯びた凸形。「はかない」と形容したいような、繊細な美しさを持っている。

 「今村秋」は高知県土佐市が原産のナシ。母親の「天の川」は新潟県が原産だ。新潟と高知の頭文字を取って、新高ナシ。

 「天の川」の新聞紙も同じようにはがす。きめの細かいきれいな皮が目に入った。こちらも先端が丸みを帯びた凸形。美しい。「今村秋」以上にはかない美しさが感じられる。

 故・菊池秋雄博士が大正時代に二つのナシをかけ合わせ、昭和二年に「新高」と命名。今や高知県の誇る秋の味覚の王様に育った。

 試験場落葉果樹科長の木村和彦さんが説明してくれる。

 「新高は味が良くて貯蔵性もいい。ただし高知県の暖かさがないと大きな実にならないんです。千葉や熊本、大分などでも作られていますが、大きさは六百-七百グラムほど。高知県は九月過ぎても暖かいでしょう。それがいいんですね」

 県農業技術課によると、県内のナシ栽培面積は百七十四ヘクタール(十一年産)。うち新高ナシが百二十六ヘクタール、約七二%を占める。高知市や高岡郡佐川町、吾川郡伊野町、春野町、土佐市が主産地で、中でも果樹試験場近くの高知市針木産は評価が高い。

 おいしいナシを求め、針木に向かった。

    □  ■

 高知県は果物王国と言えるほど四季を通じて多くの果物が取れる。しかし本来は栽培条件に恵まれない土地とされる。

 一年を通じて暖かいのはいいが、高温多湿。台風も来る。それでも高い評価を受けるのは、その厳しい条件を克服する農家の優れた技術があるからだという。

 新高ナシを皮切りに、数多い土佐の特産果物を季節を追って取り上げ、生産者の苦労や産地の抱える問題点などをリポートする。(経済部・竹村朋子)

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