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2025.01.17 08:43

公園のボール遊び 禁止?認める? 福岡市、条例規定なし 春日市、看板にルール【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】

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フェンスに「ボール遊び禁止」の張り紙がある飯原中央公園。公園に子どもの姿はなかった(福岡市早良区)

フェンスに「ボール遊び禁止」の張り紙がある飯原中央公園。公園に子どもの姿はなかった(福岡市早良区)

 「近所の公園で子どものボール遊びが禁止になった」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に福岡市内の女性から相談が寄せられた。子どもたちが安心して遊べる場であるはずの公園。利用法や騒音を巡るトラブルが社会問題化する一方、ボール遊びについて住民同士が議論を重ね、ルール作りを進めるケースもある。地域の模索を追った。

 ボール遊びが禁止されたのは小さな公園と思いきや、違った。女性が挙げた同市早良区の飯原中央公園は広さ約1万平方メートル。土の運動場を高さ5メートルのフェンスが囲んでいる。ボール遊びにはうってつけに見えるのに、「ボール遊び禁止」の張り紙があった。

 地元の飯原校区自治協議会や区によると、数年前に周辺が宅地化され、公園から住宅にボールが飛び込むトラブルが相次いだ。地域内外の中高生によるものとみられ、地元の中学校を通じて注意を促したが改善せず、走行中の車にボールが当たることもあった。

 自治協と区が話し合った結果、「ボール遊び禁止」を決めて2024年9月に張り出した。すると、公園から子どもの姿が減った。自治協の大神正則会長(76)は「熟慮の末の判断だったが、住民みんなが納得する解決策は暗中模索」と困惑する。

 自治体が設ける公園は都市公園と呼ばれ、条例でルールを定める。福岡市が管理する都市公園は約1700。市の条例は、たき火など危険な遊びを禁じてはいるものの、ボール遊びに関する規定はなく、住民や区の協議に委ねられている。

 ◇   ◇ 

 日本体育大子どものからだ研究所が19年、全国399自治体で実施した調査では、回答した276自治体の6割が公園でのボール遊びを規制。理由は「近隣からの要望」が最多だった。調査に携わった寺田光成助教(造園学)によると「地域によっては100年以上前から設けられたルールもある」という。

 住民が議論を重ね、ルールを見直した公園もある。

 閑静な住宅地にある福岡市中央区の草香江公園(1246平方メートル)。かつてボール遊びを一律禁止とする看板が立ち、守らない子どもと周辺住民の間で度々トラブルになっていた。15年、当時町内会長だった嶽村久美子さん(74)は、区やNPOと開いたワークショップや住民アンケートで子どもから高齢者まで幅広く意見を聞き、1年かけてルールを見直した。

 新ルールはバットなどを使ったボール遊びは禁止としたものの軟らかいボールは認めた。ルールが周知されるとマナーが改善され、苦情も減った。嶽村さんは「子どもたちに、全て禁止ではなく、大人と話し合って考えることが大事と伝えたかった」と振り返る。

 福岡県春日市も22年度以降、地域の自治会と協議を重ね、ボール遊びのルールを説明する看板の設置を進める。市内の公園は「近隣住民の迷惑にならず、公園からボールが飛び出ない遊び」なら原則可能だが、「危険なボール遊び禁止」と看板に掲げるところもある。市都市計画課は「ネガティブに禁止を訴えるのではなく、ポジティブな内容にした」と説明。市のホームページでボール遊びお薦めの公園を紹介している。

 住民間の合意形成を円滑にするため、寺田助教は「自治体はなぜボール遊びを禁止するかを明確に示し、ルールを変える際のガイドラインを作る必要がある」と指摘。「住民が話し合って公園を育てていくという考え方が大切だ」と呼びかける。(西日本新聞)



 県民・読者とつくる調査報道企画、高知新聞「なるほど!こうち取材班」(なるこ取材班)。連携する全国のパートナー紙の記事や県内の状況を随時掲載で紹介します。

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