2024.05.05 17:15
松本梨香「1年間は連ドラでいける」 初エッセー「ラフ&ピース」出版
松本梨香
歌手、女優、声優と多方面で活躍を続ける松本梨香が、初のエッセー「ラフ&ピース」を出版した。執筆に当たっての思いを聞いた。
【まつもと・りか】1968年、横浜市出身。ミュージカルなど多くの舞台に立つ。声優としてはテレビアニメ「ポケットモンスター」の主人公サトシ役などを務めた。
▼記者 本を出したきっかけは?
★松本 先生みたいに、学生たちにいろいろ伝える機会があって、それを字に残したいという気持ちがずっとありました。本を出したいと思っていた時に、宝島社さんからお話がありました。すごくタイムリーだったので、待ってましたという感じでした。
▼記者 執筆してみて感じたことは?
★松本 これもあった、あれもあったな、もっとここを深掘りしてみんなに伝えられたんじゃないかなとか、そういう気持ちがすごく湧きましたが、本ができた後に、自分で初めて手にして、感動しました。家族の話をたくさん書いているので、読み始めた時に何かちょっとぐっときて、泣けてきました。まさか自分が読み返した時に泣くとは思っていなかったです。
言葉でしゃべって伝えることっていうのは得意なのですが、活字でそのニュアンスや、楽しさ、雰囲気を表現するのは難しいと感じました。でも、皆さんには笑いながら読んでもらいたいです。
▼記者 他のお仕事もお忙しい中、執筆は大変でしたか?
★松本 最後の方は1週間寝ないでずっと直していたので、きつかったですね。他の仕事もやりながらだったので。あんまり掘り下げて書くよりも、みんなにあえて想像させるところもあった方がいいかなとも思ったりして。
以前、絵本を出した時に、字が多かったので、今回は字を減らしたいという思いがありました。今回も全部しゃべり言葉でわーって書いちゃうかもしれなかったので、それはなるべくしないようにしました。
▼記者 今回は初めてのエッセーですね。
★松本 まだ一部分で、これが全部ではないです。もう一回書く機会があるなら、もう少しまた違ったものを出せると思います。言いたいことがたくさんあるので、これだけでは足りないです。いつも言っている自分の考えとかを、入れておけばよかったとも思いました。「続けることでしか見られない景色がある」ということや、「自分がぶれない気持ちでずっと一生懸命やっていれば、自分がたどり着きたい駅は絶対ある」とか。
▼記者 こちらの本、とても読みやすいです。
★松本 本が結構苦手な人、読んでたら疲れて途中で投げちゃう人とかいると思います。でもこの本は、ぱっと読めちゃう。途中で開いたところから読める。本に苦手意識のある人も克服できるような本になったと思います。
▼記者 内容も面白いです。
★松本 連ドラになるといいな(笑)。舞台も、家族構成も面白いですし、自分としては、家族はすごく個性豊かでネタにできるので、あったことをしゃべっただけでも全部ドラマになると思ってます。エッセーに書いたのは、本当に一部分だけ。もっとすごいことがいろいろあるので、1年間は連ドラでいけるかな(笑)。
▼記者 今回はエッセーに挑戦されましたが、これからしてみたいお仕事は?
★松本 エッセーにも書かせてもらったんですけど、パラリンピックで国歌斉唱とか、誰かの背中を押せるような、寄り添えるような、そういう仕事をどんどんやっていきたいです。元気づけられるような、自分が誰かの役に立てることが一番やりたいことです。そばにいる友達や、近所の人、いろんな人が笑顔につながるようなことをやっていきたい。
▼記者 エッセーの中では声優業界の人気を底上げしたいとも。
★松本 声優という仕事に限りませんが、自分が拾ってもらって恩返しをしたいという感謝がすごくあるので、その恩返しをしていく人生だと思っています。これからはどんどん返していきたい。自分が苦手なものであったとしても、やったことのないことだったとしても、そういうお話があったら、ちゃんと真摯に向き合って、自分ができる表現をしていきたいです。
この本もそうですけど、やったことないことをやれたというのは私だけの力じゃなくて、スタッフの方や宝島社の方が動いてくださって、できたと思っています。みんながしてくれた分を次につなげていきたい。やっぱり感謝で返していかなくちゃいけない。やり続けていくっていうことがすごい大事だと思います。
▼記者 ご縁のあった方からのメッセージも掲載されています。
★松本 ありがとうとか、いろんなお話を仲の良い人たちからもらいました。温かい本ができたんじゃないかな。本の中で、大きな字で書いている言葉があるんですけど、身近に感じてもらえたらいいなと思います。
自分が寂しがり屋なので人がいた方がうれしいんですよ。小さい時は、人が周りにいつも10人以上はいたので、1人暮らししたいなと思った時もありました。でも今思うと、両親も兄も他界していなくなって、姉も結婚して。早くに1人になって、その時に、こんなに早く1人になるんだったら、1人暮らししたいなんて言わないでよかったなと思って。
▼記者 寂しい時によりどころになるような本に?
★松本 寄り添える本を作りたいというのが最初にあったコンセプトだったので、この本を読んで寂しくなくなるというか、踏ん張れると感じてもらえたらいいなと思います。
(取材・撮影=共同通信 高坂真喜子)
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