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2024.05.04 08:00

【みどりの日】山の「今」に目を向けよう

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 高知県は2028年の「全国植樹祭」の招致活動を進めている。夏ごろ開催地が決まる見通しで、実現すれば、1978年に県立甫喜ケ峰森林公園(香美市)で開かれて以来、50年ぶり2回目となる。
 植樹祭は、国民の森林への理解を深めることを目的に開かれる。天皇、皇后両陛下の出席が慣例となっている四大行幸啓(ぎょうこうけい)の一つで、開催地の森づくりや林業に与えるインパクトは大きいものがある。
 招致について浜田省司知事は、森林率(84%)が全国で最も高い森林県の立場を強調。再造林事業を本格化させるなど山の整備を進める中で、植樹祭が事業の弾みになるとの考えを示す。
 きょうは「みどりの日」。4年後の植樹祭も念頭に置きながら、改めて高知の山の今に目を向けたい。
 県内の民有林は現在、伐期を迎えた樹齢45年以上の木が9割近くを占める。蓄積された森林資源の活用とともに、将来にわたって原木生産を維持するための再造林の普及が課題となっている。
 こうした中で県は、傾斜が緩い、道路が近いなど作業効率の良い場所を「林業適地」とし、資源の更新を促す取り組みを本格化させた。再造林推進プランを作り、皆伐後の再造林面積の目標を大幅に引き上げ、そのための施策を明記した。
 再造林を進める上でネックになっているのは、すぐ収益につながらない中で費用捻出を強いられる山林所有者の心理的負担だ。この解消へ、デジタル技術や先端機械による効率化などで、伐採や再造林作業の収支を改善し、基金創設など公的な支援体制も手厚くする。
 目標達成には山林所有者の意欲をいかに引き出せるか、周知啓発が鍵になる。担い手確保も大きなテーマで、新規就労者の育成・確保はもとより、伐採事業者と造林事業者が一体的に作業するなど効率アップのための仕組みも重要になる。
 皆伐で原木生産が増える以上、製品の出口を確保していくことも求められる。中でも、資源が成熟してきた中で割合が増えている大径木(太い木)は、加工しづらいなどの理由で市場価値が低い。特性を踏まえた製品開発などが急がれる。
 住宅着工件数が減少傾向の中、非住宅分野への対応も欠かせない。需要の掘り起こしと、ニーズに応えられる商品の生産体制の整備も進める必要がある。
 山のための予算、財源という面は改善されてきたと言えるだろう。2019年度から配分が始まった森林環境譲与税(国税)は、当初は未利用額が多い点が問題視されたが、23年度は配分額500億円のうち8割が山林整備などに使われた。
 24年度から個人住民税として年間千円の徴収も始まり、配分総額は23年度比100億円増の600億円となる。配分方法も山間部が手厚くなるよう見直された。中山間地域が長年の要望の末に確保した貴重な財源だ。県内自治体も効果的な活用へ知恵を絞っていきたい。

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