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2024.04.29 06:00

35歳女性のリアリティーに号泣必至 『魔法少女☆(ハート(白))三十路』の三倉ゆめさんインタビュー ※担当編集者音声連動 

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 「魔法少女☆(ハート(白))三十路」1巻<(C)三倉ゆめ/少年画報社>

 「おジャ魔女どれみ」「カードキャプターさくら」…。女の子なら一度は憧れる「魔法少女」に、もしなれたとしたら。少年画報社の漫画雑誌『ヤングキングBULL』で連載中の『魔法少女☆(ハート(白))三十路』は、自己肯定感が低く、「目立たず幸せに」暮らしたい35歳会社員の主人公・保守(ほし)ようこが、ウサギの妖精によって突然、魔法少女にさせられるコメディー。戸惑いながらも敵と戦うようこの姿には、けなげさやかわいさや年齢的なリアリティーなどがちらつき、漫画好きたちの間で話題となっている。「ようこは理想の自分」と語る著者の三倉(さくら)ゆめさんに、30代の漫画担当記者と、「電車で3巻を読みながら号泣した」と言う、同じく30代の女性記者がインタビューした。(共同通信=川村敦、大倉たから)




【目次】


(1)「痛い」と言われても、頑張る


(2)魔法少女って、かわいい


(3)ギャグをリフレッシュ



※画像表紙



(1)「痛い」と言われても、頑張る



■川村 連載当初、30代の女性が突然「魔法少女」になった「リアルドキュメント」として、インターネット上で大きな話題となりました。以降、「次にくるマンガ大賞 2023」にノミネートされたり、名古屋市に本社を置く「三洋堂書店」主催の「#でらコミ!5」の大賞に輝いたりしています。



★三倉 ありがとうございます。



■川村 改めて、本作ができるまでの経緯を教えてください。



★三倉 はい。私は『週刊少年マガジン』で『彼女、お借りします』を連載中の宮島礼吏(みやじま・れいじ)先生のところでアシスタントをしながら、『事故物件の幽霊ちゃん』などの作品を描いてきました。『ヤングキングBULL』で2回、読み切りを描かせてもらい、編集者の上田さんから「次は連載を」と言ってもらって。それからテーマの打ち合わせを重ねていたんです。



■川村 それが本作につながったのですか?



★三倉 いえ(笑)。行き詰まってしまって、気分転換で温泉にでも行こうと思って。お風呂に入ったり、散歩したりすると、アイデアが浮かぶじゃないですか。それで温泉に行ったら、35歳の女性が、魔法少女のコスプレした絵が面白いんじゃないかって、ふと思いついたんです。



■川村 (笑)。どこの温泉に行かれたのですか?



★三倉 普通のスーパー銭湯です。「極楽湯」っていう全国チェーンの。



■川村 身近ですね(笑)。でも、今のご時世、年齢を切り口にすることの難しさは感じませんでしたか?



★三倉 感じませんでした。最初から、自分と同世代の「35歳の魔法少女っていいな」っていうふうに考えたので。コスプレした主人公のようこは、世間的に見たら「痛い」存在なのかもしれないけど、全然いいなって。かわいいなって思いながら描いています。



画像中面(1)



▼大倉 私も同じ30代の女性として、共感しながら読みました。どうやってこのリアリティーを出しているんでしょうか。



★三倉 ほとんどは、自分が体験したことを膨らませて描いています。例えば3巻に登場する「相葉ちゃん」は、20代の時からずっと夢は「お嫁さんになること」と言ってきたけど、30代になると、その夢を口にするたびに周りから「痛い人」だと思われ、孤立していきます。



▼大倉 相葉ちゃんの気持ち、ものすごく共感しました。頑張ってるじゃん、みたいな。



★三倉 「何でこんなことを言われなきゃいけないんだろう!」って生き方をしてますよね。私も、こういうことを言われて「ちくしょう!」ってなることがあるので、そういう感情を使う感じです。漫画を描いているとどうしても、自分に才能がないことを漫画に教えられることが多くて、そういう「ちくしょう!」が相葉ちゃんの葛藤とすごく似ているんじゃないかなとも思います。



■川村 必死に頑張って努力しているだけなのに、周りから「痛い」と思われることってありますよね。



★三倉 そうですね。日々苦しんでいます。相葉ちゃんと一緒です。なので、『魔法少女☆(ハート(白))三十路』がつまらなくても、思ってもいいけど言わないでほしいです(笑)。あと、上田さんとたくさん話して…。



■川村 1~3巻の帯で、ようこのコスプレをしている名物編集者の上田さんですね。



★三倉 そうです。私は打ち合わせで、世の中に対しての不平不満をたくさん言うので、その中からリアリティーのある話題が生まれたりもしています。




(2)魔法少女って、かわいい



■川村 三倉先生のこれまでの画風に比べて、かなり青年誌寄りの仕上がりになっていますね。



画像中面(2)



★三倉 そうですね、これまでは少年漫画だったので、本作は大人っぽく、青年寄りにして。



■川村 すごい描き分けだなと思いました。抵抗はありましたか。



★三倉 そういうのはなかったですね。どっちかっていうと、こういう絵柄の方が好きかもしれない。



■川村 え、そうなんですか! 『事故物件の幽霊ちゃん』の幽霊のクロちゃんなんて、めちゃくちゃかわいいのに…。



★三倉 どっちかっていうと、青年誌を読んできたので、こっちのほうが描きやすい(笑)。特にようこは描きやすいです。



■川村 愛もありますね。



★三倉 逆に描きにくいのは、女子中学生で、同じ魔法少女の心(こころ)ちゃん。「魔法少女☆(ハート(白))三十路」の絵柄と変わりすぎてもおかしいので、悩ましいですね。



■川村 主に青年誌を読んできた、というのも驚いたんですが、漫画家を目指したきっかけは何だったんでしょうか。



★三倉 きっかけは…、ありすぎて絞れないですね(笑)。幼稚園ぐらいの頃から、チラシの裏を使って漫画を描いていました。ポケモンの絵を描いたり。でも、小学生の頃に、周りの友達が結構みんな漫画を描いていて。漫画を描くのが当たり前だった気はします。



■川村 その頃から青年誌を?



★三倉 いえ、その頃は漫画を読んでなかったんです(笑)。アニメばっかり見ていました。子どもの頃は、アニメで好きになった作品の漫画を読むって感じでしたね。高校生になって、具体的に漫画家になりたいと思うようになった頃に、青年誌を読んでいたって感じです。



■川村 漫画家さんとしては珍しいタイプのような気がします(笑)。どんなアニメが好きだったんですか?



★三倉 「おジャ魔女どれみ」とか、「プリキュア」シリーズとかですね。かわいい女の子が好きなんです。魔法少女って、かわいいし、誰かを救っている。他にも「交響詩篇エウレカセブン」のヒロインのエウレカとか本当にかわいいなと思っていました。作品として特に好きだったのは、中学生の時に見た「神のみぞ知るセカイ」でした。



■川村 「神のみぞ知るセカイ」は名作のラブコメでしたね。私も『週刊少年サンデー』で読んでいました。



★三倉 「神のみぞ知るセカイ」から、深夜アニメにハマりましたもん。



■川村 そうした素養があって、高校生で漫画家を目指すようになった、と。



★三倉 勉強もスポーツもそんなにできるほうではありませんでしたし、人生を2次元に支えられていましたので、そのぐらいの時には、漫画家になりたいって周りに言っていました。でも、口だけだったんです。そうしたら友達の1人が出版社に持ち込みをすると言っていて、危機感を覚えました。そこから真剣に描き始めて、アニメ系の専門学校に進学して、講談社の新人賞を頂いて…。担当さんから「宮島先生がアシスタントを探している」という話を聞いて、専門学校を辞めて2017年にアシスタントになったって感じです。



■川村 三倉さんの漫画には、キャラクターが信念を貫こうとするシーンが出てきます。『事故物件の幽霊ちゃん』の主人公の薫(かおる)しかり、『魔法少女☆(ハート(白))三十路』のようこしかり…。三倉さんも、漫画家になりたいという信念を貫いた人だと思っていますが、大事にしている考え方なのでしょうか。



画像中面3




★三倉 どうでしょうかね…。私自身が、すごく他人の目を気にするタイプで、他人の目を気にしないで生きていく人に対して憧れがあるのかもしれません。『魔法少女☆(ハート(白))三十路』は、スーパー銭湯で急にひらめいた作品でしたから、毎月必死に物語を考えているだけです(笑)。ただ、ようこは私より、うまく生きているなという感じはしています。ある意味、理想の自分なのかもしれません。



■川村 『事故物件の幽霊ちゃん』は、人と幽霊ではありますが、女性と女性の絆を描いた感動的な作品でした。対して『魔法少女☆(ハート(白))三十路』は、かなりの数のギャグが詰め込まれています。ギャグはセンスだと思いますが、難しくないですか?



★三倉 苦手ですね(笑)。うまく描けている気はしていません。『銀魂』とか『あそびあそばせ』とか、大好きなギャグ漫画を思い出して、技術的な部分を分析しています。




(3)ギャグをリフレッシュ



▼大倉 『魔法少女☆(ハート(白))三十路』は、1~2巻がギャグ要素が強くて、3巻は泣かせる展開です。この展開の意図を教えてください。



★三倉 3巻が描きたくて1~2巻を描いたというわけではなくて、3巻もギャグ要素を濃くしてしまうと、作品の広がりが見えなくなると思ったんです。4巻以降のギャグがまた新鮮に見えるように、リフレッシュしたいなと思いました。それと、ようこの面白い部分だけじゃなくて、活躍する姿を入れたかったんです。ようこは魔法少女であることが恥ずかしく、仮面をかぶっているんですが、それを外して35歳の素顔のコスプレ姿をさらしてでも、相葉ちゃんを救ったらかっこいいなと思いまして。



画像中面4




▼大倉 3巻は、ようこも相葉ちゃんも、心理描写が非常にスムーズで丁寧です。



★三倉 私が丁寧にしないと気になっちゃうタイプなんです。この作品はリアリティーのラインが高いので、キャラクターの心の中もリアルに考えないといけない。



■川村 その心理描写があまりにリアルで、3巻は私も泣きながら読みました。



★三倉 でも、ようこは、自己肯定感の低い「男性っぽい思考形式」の女性キャラだと思っていて、その考え方に共感できない女性読者もいるのではないかとも思っています…。



▼大倉 そんなことないですよ。



★三倉 だといいのですが…。



■川村 3巻の泣かせる展開が終わって、今後の展開はどうなるのでしょう?



★三倉 何にもないんです。



■川村 ないんですか(笑)。



★三倉 3巻で終わっちゃうんじゃないかと思うぐらい、自分としては読者の皆さんにどう読まれるか怖い展開だったので、これから皆さんの反応を見つつ、どうするか考えていきたいなと思っています。あと、将来的にはアニメもやってみたい…と思っていますので、いろいろチャレンジしながら頑張っていきたいと思います。



※『魔法少女☆(ハート(白))三十路』は、第4巻が6月末に発売予定!



※YouTubeチャンネル「うるおうリコメンド」(略称うるりこ)で、『魔法少女☆(ハート(白))三十路』担当編集者・上田さんのインタビューが聴けます。

(c)KYODONEWS

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