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2024.04.24 05:00

【外国人育成就労】人権守る視点は十分か

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 外国人材の受け入れを巡り、従来の技能実習制度の代わりに「育成就労制度」を導入する関連法改正案が国会で審議入りした。
 技能実習制度は、技能移転による国際貢献を掲げたにもかかわらず、実際は安価な労働力の確保に利用され、人権侵害も多数指摘された。
 育成就労制度は外国人材の「育成・確保」を目的とし、置き去りにされてきた人権対策も強化する。国内の労働力不足が進む中、働きやすい環境づくりを通じて「外国人材に選ばれる国」を目指すとする。
 だが、受け入れの枠組み自体は大きく変わらず、「看板の掛け替え」にとどまる懸念も指摘される。新制度の理念が具体化されるよう、より踏み込んだ議論が求められる。
 新制度は、一定の技能があり最長5年働ける特定技能1号水準の人材を3年間で育てる。より熟練した特定技能2号に移行すれば永住もできるようになり、外国人が日本で長期的に活躍するための道筋を明確にしたと言える。
 ただ、人権、働きやすさという視点での取り組みは十分だろうか。
 技能実習制度では、受け入れ先の賃金未払いやハラスメントが問題になるケースが相次ぎ、転籍(転職)できないため失踪者も続出した。その反省から、新制度は転籍を認めているが、賃金の高い都市部に人材が集中するとの懸念などから「分野ごとに最長2年まで転籍を制限できる」と規定した。
 これに対し、転職の自由という基本的な権利の制限に踏み込みすぎであり、また、技能習得や転籍手続きなど実務面でもハードルが高すぎるとの指摘が出る。なお議論の余地があるのではないか。
 高知県のような地方の受け入れ先にとっては、賃金面を理由にした早期転籍は確かに痛手になるが、処遇面も含めて魅力ある職場づくりなどの経営努力で対応したい。必要なら公的支援策も検討されるべきだ。
 技能実習制度では、外国人の受け入れ仲介や企業の監督など担う監理団体があり、制度の適正運用のために「外国人技能実習機構」も設置されている。しかし実習生の保護で役割を果たさないケースもあった。
 新制度ではそれぞれ、「監理支援機関」「育成就労機構」と名称を変えて存続する。名前だけでなく、機能も変わらなければならない。
 ほかに、悪質なブローカーの排除へ転籍手続きで民間業者の関与は認めないことなども盛り込んだ。いずれの取り組みも、実効性を高めていくことが求められる。
 法案は、外国人永住者の増加を見込み、納税など公的義務を故意に怠った場合は永住許可を取り消せるようにした。しかし、最も安定した在留資格であり、相応に扱われるべきだ。日弁連は差し押さえで対応可能とする。法案の理念とも逆行するのではないか。
 外国人材が増えればその家族も含めた生活支援が重要になっていく。そうした視点での取り組みを強化していくことも欠かせない。

高知のニュース 社説

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