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2024.04.22 08:00

小社会 核と米国

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 1956年の「怪獣王ゴジラ」はなんとも腹立たしい映画だ。日本のゴジラシリーズ第1作「ゴジラ」(54年)の海外版で、以前も本欄で触れたように内容が米国で再編集された。

 元の日本版が製作されたのは終戦の9年後。まだ広島、長崎の原爆の記憶も新しいこの年、米国の水爆実験で多くの日本の漁船が被ばくする。ビキニ事件である。ゴジラはこの実験で目覚める設定で、反核を強く意識した作品だった。

 それが米国版ではゴジラが暴れる場面を生かしつつ、核の問題に触れたシーンはほぼカットされた。核実験が続けば「ゴジラの同類がまた、世界のどこかへ現れてくるかもしれない」。山根博士の悲痛な訴えも消された。

 要するに単なるパニック映画にしてしまった。米国社会の核への意識の低さが分かる。そんな出来事から約70年。日本で上映中の米映画「オッペンハイマー」が話題になっている。原爆を開発した米国人科学者のその後の苦悩を描いた。

 ドイツや日本との戦争を終わらせるために開発した原爆。旧ソ連に対抗して手にした水爆。だが1個の核兵器はやがて1万個、10万個の問題へと発展する。「われわれはそう考えるべきだった」とオッペンハイマーは生前、講演で語っている。

 きょうは彼の生誕120年。その半生を映画にするようになったいまの米国社会なら、過去も省みることができるだろうか。狂気の核開発も、反核映画の改悪も。

高知のニュース 小社会

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