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2024.04.21 05:00

【イスラエル報復】地域紛争につなげるな

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 中東情勢が緊迫化している。地域紛争に拡大させてはならない。報復の連鎖を断ち切り、安定へ向けた取り組みの強化が求められる。
 イスラエルがイランに反撃した。中部イスファハン近郊の空軍基地を無人機で攻撃したようだ。被害は報告されていない。
 今回の応酬は、シリアにあるイラン大使館が攻撃を受けたことから始まった。イランは報復としてイスラエルに大規模攻撃を行い、イスラエルは報復の権利を主張していた。
 イスラエルは越境攻撃を仕掛けるレバノン民兵組織ヒズボラなどに、イランがシリア経由で武器を提供しているとみる。シリア領内を再三攻撃していたが、公館への攻撃でイランとの対決姿勢を強めたと受け止められ、緊張が高まった。
 一方、イランによるイスラエルへの直接攻撃は初めてだった。ただ、限定的な作戦であり、攻撃は抑制的だったとのメッセージを発するなど、対立の先鋭化を回避したい思惑もうかがわせた。
 イランの最高指導者ハメネイ師が報復を宣言し、保守強硬派の要求も無視できない。しかし、全面衝突となればイスラエルを支援する米国の参戦につながりかねない。体制の存続にも関わってくる。
 イスラエルにしても、本国への攻撃を何もせずに見過ごせば政権維持に響くのは同じだ。昨年10月にはパレスチナ自治区ガザ境界付近で開かれていたイベントにイスラム組織ハマスの奇襲を許し、人質を取られている。ネタニヤフ政権は批判を回避するため、ガザでの強硬姿勢を緩めていない。
 とはいえ、米国との亀裂が表面化する中、対イランでは同様の対応はとりにくいのが実情だ。反撃の決定が延期されてきたのは影響の度合いを見計らっていたのだろう。
 イラン、イスラエルともひとまずは限定的な軍事作戦に踏みとどまった。イランが再攻撃への言及を避けるなど、互いにこの程度にとどめたい本音がにじむ。
 だが、先行きは予断を許さず、紛争拡大の懸念が消え去るわけではない。各国は双方の自制を求めている。ガザでの即時停戦と人道支援を含め、中東の安定化への道を探る必要がある。
 核施設が標的となることへの懸念も拭えない。今回の攻撃でイランの核施設は無傷だったようだが、危険性は排除できない。
 イラン革命防衛隊幹部は、核施設が攻撃されたらイスラエルの核施設を攻撃すると警告している。イランは核兵器保有の意思を否定しているが、核政策の変更もにじませた。
 核施設を巡っては、ウクライナ南部でロシアが占拠する欧州最大のザポロジエ原発も危惧される。ロシアは無人機攻撃があったと主張し、ウクライナ側はロシアの自演と関与を否定する。実態は不明だが、原発の安全を脅かす深刻な事態だ。
 核施設周辺の軍事行動は慎まなければならない。偶発的な事態を招いては取り返しがつかなくなる。

高知のニュース 社説

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