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2024.04.18 05:00

【万博まで1年】開催へあまりに課題が多い

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 大阪・関西万博の開幕まで1年を切った。計画では大阪湾を埋め立てた人工島の夢洲(ゆめしま)を会場に、約160の国・地域や企業がパビリオン(展示館)を出展する。
 開幕が迫る一方で課題が山積し、開催の意義を発揮できるか疑わしい状況だ。
 一つは、膨らみ続けた費用だ。会場整備費は2度にわたり増額され、当初から1・9倍の最大2350億円に膨張した。運営費も、1・4倍の1160億円に増えた。
 運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)は、資材の高騰や人件費の上昇が原因とする。やむを得ない面はあるだろう。だが、整備費の大半は国と大阪府市が負担する。この国負担分を含めた直接の国費総額は1647億円に上る。想定を大きく上回る税金の投入に、見通しが甘かったと指摘されても仕方ないだろう。前売りチケットの売れ行きも目標の6%にとどまり、入場料収入で多くを賄う運営費でも公費負担が増える恐れがある。
 万博には約2820万人の来場が見込まれ、全国の経済波及効果は2兆9千億円ほどといわれる。観光やビジネス面から、本県をはじめ商機とみる自治体も少なくない。
 しかし、国民の関心は低調だ。度重なる負担増で不信感が募っているからではないか。盛り上がりに欠ける現状にPRの強化が予想され、経費のさらなる上振れも懸念される。コスト削減と丁寧な説明に努め、不信感を払拭する必要がある。
 万博の「華」となるはずの海外パビリオンの建設も遅れている。
 参加国・地域が独自に建てるタイプの着工は、全体の3割弱にとどまる。3割の国は建設業者も決まっていない。簡素化するほか、撤退する国も出ている。人件費や資材の高騰などで建設業者との契約が難航しているせいだ。
 この課題も建設業界側が早くから指摘していた。万博協会は予想し、対応できたはずだ。
 万博に対しては、1月の能登半島地震を機に国民がいっそう厳しい目を向けている。2月の共同通信の世論調査では、約7割の人が延期や中止、規模縮小といった計画変更を求めた。
 政府は、復興への悪影響は確認されないとして計画変更を否定する。だが、復旧や復興が急がれる中、多くの人が大量の資材や人員を使う万博に複雑な思いを抱くのは当然だ。有識者や業界関係者からも、同様の声が上がる。支障を来すのなら、柔軟な対応をとることが重要だ。
 関西経済は長く低迷を続け、万博会場の夢洲は開発が進まず「負の遺産」と呼ばれてきた。万博は、それらの復活の起爆剤として誘致された経緯がある。開催自体が目的になり、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの趣旨が伝わってこない。
 万博は本来、世界が直面する課題の解決策を示す場だといわれる。理念や意義をもっと語らなければ、成果もしぼんでしまう。

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