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2024.04.13 05:00

【韓国与党大敗】日韓関係の悪化を防げ

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 韓国総選挙(国会定数300)は、革新系の最大野党「共に民主党」が比例代表向けの系列政党と合わせ175議席を獲得し、尹錫悦(ユンソンニョル)政権の保守系与党「国民の力」に圧勝した。
 野党側が議席の過半数を占めるねじれの状態は解消されなかった。総選挙は、5月で就任から2年となる尹大統領への「中間評価」の側面を持つ。尹氏は一層苦しい政権運営を強いられることになった。
 尹政権は、5年ぶりの保守政権として2022年に発足した。尹氏は貧富の格差拡大や保守と革新の対立が深刻化する中、国民に団結を訴え、急速な経済成長による課題解決を目指した。
 しかし、尹政権の支持率は30%台に低迷し、選挙戦は当初から接戦が予想されていた。
 与党の敗因の一つは、「独善」「強引」との批判を招いた尹氏の政治手法だ。家族の不正疑惑や身びいきの人事をはじめ、医師不足対策として掲げた大学医学部の定員増の問題でも強硬姿勢を貫き、社会に混乱を招いた。
 急激な物価上昇についても目立った成果を出せなかった。特に生鮮食品の値上がりは著しく、今年2、3月の物価上昇率は前年同月比で約20%を記録した。尹氏の物価感覚を疑わせる、長ネギの値段に関する発言も与党に大打撃となった。
 韓国は超少子化が進み、所得格差の拡大、弱者へのしわ寄せなど課題が山積する。国民の政治に対する関心が高く、今回の投票率は1996年の総選挙以降で最高の67・0%を記録した。
 にもかかわらず、選挙戦では肝心の政策や公約が語られず、与野党は非難合戦に終始した。国民の期待に沿った選挙戦とは言えなかった。
 野党側の「政権審判」の訴えが奏功し、政治不信や不満が与党に向いた選挙結果であり、野党側も積極的に支持されたわけではないということを自覚するべきだ。国民の分断、政治の劣化が危惧される。
 気がかりなのは、改善基調にある日韓関係への影響だ。
 野党側は単独で法案を迅速に採決できる180議席以上を確保した。国会の主導権を握られた尹氏の求心力の低下は避けられない。
 最大の懸案だった元徴用工訴訟問題に対して尹政権は昨年3月、韓国政府としての解決策を発表した。首脳同士が相互訪問する「シャトル外交」も本格的に再開された。「戦後最悪」と言われるほど冷え込んだ文在寅(ムンジェイン)前政権時からの転換を明確にしてきた。
 与党が大敗しても、尹氏の日韓関係を重視する姿勢は変わらないとの見方が強い。しかし、尹政権の対日政策に批判的な野党が今後圧力を強めれば、これまでのような対日外交が難しくなる可能性がある。内政の行き詰まりから、強硬路線に変換することも否定できない。
 来年は日韓国交正常化60年という節目の年だ。安保を含む幅広い共通の課題に立ち向かう対等なパートナーとして関係を築いていきたい。

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