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2024.04.09 08:00

小社会 春を待つ

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 ことしもツバメが舞う季節になった。あのスリムないでたちと、曲芸のような飛行は、いつ見てもほれぼれする。

 明治・大正期の詩人、山村暮鳥にツバメへの愛着と尊敬にあふれる作品がある。「きり きり つばめ 燕(つばめ)、どこいつた わたしの目へ飛びこんだ」「きり きり さへづつて 飛びこんだとおもつたら もう彼方(あちら)をとんでゐ(い)た」。

 よく知られるように春とともに南の国から渡ってくる。人家の軒下などに巣を作り、田畑の害虫を餌にしながら子育てに励む。五穀豊穣(ほうじょう)や子孫繁栄の縁起よい鳥とされるため、暖かくなって飛び始めると、ことしもよく来てくれたと安堵(あんど)する。同時に季節の巡りの早さを感じさせる鳥でもある。

 ツバメたちは変わらぬ春を迎えたようだが、私たちはどうだろうか。1年前に比べ暮らし向きは? 発表によると、2月の実質賃金は前年同月比1・3%の減。23カ月連続のマイナスを記録した。

 リーマン・ショックの影響にあえいだ2007年9月~09年7月と並び、最長という。物価の上昇に賃金の伸びが追い付いていない証しだ。企業業績などの経済指標は改善しており、日銀は異次元の金融緩和の見直しに入ったが、肝心の国民はいまだ上向きの景況感に乏しい。

 折しも植田和男日銀総裁はきょうで就任1年となる。曲芸のような景気回復は望まないが、そろそろ国民は上昇を感じたいところ。もう「春」を待って久しい。

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