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2024.04.08 08:00

【子育て支援金】負担の議論を避けるな

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 児童手当の拡充や育児休業給付の引き上げなど経済的支援を柱とする少子化対策関連法案が、国会で審議入りし、議論が本格化した。
 最大の焦点は、2026年4月に創設される「子ども・子育て支援金」だ。公的医療保険料に上乗せして国民から徴収する。段階的に引き上げ、28年度には総額1兆円を見込む。今後3年間の少子化対策に必要となる、年最大3兆6千億円の財源の一部に充てる。
 社会保障の歳出削減で「実質的な負担は生じない」と、政府は繰り返している。しかし、その説明を疑問視する声は多い。率直で丁寧な説明が欠かせない。
 政府は2月、1人当たりの徴収額が28年度には月平均500円弱になるとの試算を示した。だが、これには支援金を払わない子どもらも含まれていた。審議入り直前の先月末になってようやく、医療保険別の試算を公表した。
 試算によると、実際に支援金を払う被保険者の負担額が最も大きいのは、共済組合の公務員らで28年度に1人当たり950円。健康保険組合に加入する大企業の会社員が850円で、全国健康保険協会(協会けんぽ)に入る中小企業の会社員が700円と続く。最も低いのは75歳以上の人で350円になるという。
 負担をイメージしやすくはなったが、実際の徴収額は共働きかどうかや所得で異なる。試算は平均月額にとどまり、一人一人がどの程度の負担となるか具体的に示さなかった。
 政府は、社会全体で少子化対策を実施するとの理念を掲げている。だが、負担をどう分かち合うのか、現実的な金額を示さなければ、議論は深まらず、国民の理解を得ることは難しい。
 不可解なのは、歳出改革で医療や介護などの社会保険料を抑制し、賃上げが進めば、実質負担がゼロになるという政府の主張だ。高齢化で社会保障費が膨らむ中、減額は簡単ではない。賃上げについても、企業によって大きな差がある。改革の実現は見通せず、主張には無理がある。
 本社加盟の日本世論調査会が1~3月に行った調査では、支援金に「どちらかといえば」を含め反対が計58%、岸田文雄首相の説明に「納得できない」と「あまりできない」は計81%だった。多くの人が疑問を持っていることは明らかだ。同じ説明を繰り返すのならば、不信感はさらに強まるだろう。
 負担の議論を避ける一方で、政府は給付の試算を示し、支援金創設の意義を強調する。子どもが生まれてから18歳になる年代までに通算で受けられる児童手当やサービス費の総額は、1人当たり平均146万円で、支援金の負担を上回るとする。メリットの大きさを訴え、負担を小さく見せる狙いもうかがわれる。
 赤ちゃんの生まれた数は22年に初めて80万人を割り、23年は一段と減った。少子化は長年の政策課題であり、対策強化が必要なことには間違いない。正面から負担と給付のあり方を説明し、理解を求めるべきだ。

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