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2024.04.05 08:00

【自民裏金処分】実態解明は終わらない

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 実態が解明されなければ処分の根拠が明確にならず、納得は得られはしない。説明責任をないがしろにする姿勢では反発を強める。幕引きは許されない。
 自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件に関係した議員らの処分を決めた。過去5年間の政治資金収支報告書への不記載総額が500万円以上の議員らと、一部の安倍派幹部を含む計39人を対象とした。
 組織的な裏金づくりを続けていた安倍派の衆院側、参院側のトップだった塩谷立、世耕弘成両氏を離党勧告とした。ほかに党員資格停止、党役職停止などを科した。岸田文雄首相と、衆院選不出馬を表明した二階俊博元幹事長は除外された。
 離党勧告は8段階ある党処分の中で除名に次いで重い。選挙では党の支援を得られず、衆院では比例復活ができなくなり小選挙区で当選するしかない。国会活動は制約され、政党助成金が受けられなくなるなど資金確保も難しくなる。
 世論は厳しい処分を求めている。それを受け止めた厳正な対応を印象づけたいはずだ。低迷する政権を浮揚させる足がかりとしたい思惑もあるだろう。
 だが、説明責任を果たさないことへの批判や、裏金を受け取った議員への税務調査を望む世論が多数を占める。この状況が示すように、「政治とカネ」問題に向けられる不信は根強い。処分でそれを払拭しようとしても簡単ではない。
 派閥からの還流資金を収支報告書に記載しなかったのは、立件議員らを除き85人だった。議員によって関与の度合いが異なるため、一律処分では不公平との判断から、不記載額の多寡で処分の軽重が判断された。だが、この線引き自体に党内からも批判が向けられる。
 重い処分を科せば党内に首相への反発が広がり、総裁再選が遠のきかねない。一方で、次期選挙への不安を抱える若手議員らからは処分が軽いという声も上がる。身動きが取りにくい状況で首相がいかに対応するかが注目されたが、指導力を発揮する姿勢はうかがえなかった。
 そもそも、処分の根拠となる実態の解明が進んでいないことが問題だ。安倍派は2022年に資金還流中止を決め、その後に復活させている。しかし、幹部4人は誰がどう決めたのか知らないとし、責任を認めていない。
 裏金づくりが始まったきっかけや使途、廃止から復活した理由などが不明のまま処分に踏み込んだのは、問題の収拾を急ぎたいからだと思われても仕方ない。4人の処分が分かれた背景に、今後の政権運営をにらんだ思惑さえ取り沙汰される。これではかえって混迷を深める。
 首相は今国会中の政治資金規正法改正に意欲を示す。欠かせないことだが、批判をかわすための対応にとどまるようでは意味がない。実効性のある内容にすることが重要だ。そのためにも解明が不可欠で、実態を曖昧にしたままでは制度の充実は遠のいてしまう。

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