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2024.04.03 08:00

【デジタル教材】活用へ現場の環境整備を

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 文部科学省が2025年度から中学校で使われる教科書の検定結果を公表した。デジタル教材が大幅に増えたのが特徴だ。
 1人1台のデジタル端末が配備され、学校現場ではタブレットやパソコンを使った学びが日常化している。教材の充実は必然的な流れだといえる。
 とはいえ、適切な教材の在り方や使い方に関する検討は道半ばとなっている。かねて指摘されてきた教員の業務負担や、子どもの健康への懸念も解消されていない。
 教材とは別に、24年度から小中学校の英語でデジタル教科書が本格的に導入される。教育のデジタル化は一層進む。学習効果や課題を長期的に検証しながら、デジタル技術を学びの充実にどう生かしていくか、考えなければならない。
 デジタル教材は、教科書に載った2次元コード(QRコード)を読み取って利用する。英語の音声をはじめ、理科の星の観察や書写の左利きの生徒向け動画など、教科書では表現しにくいさまざまな内容が用意された。教科書会社の中には、現行版と比べ、教材を8倍以上増やした会社や、従来は教科書に載せていた教材の一部をデジタル化した会社もあった。
 近年の教育政策は、主体的に活動する探究型学習や、一人一人の特性に合わせた学びを提唱している。選択肢の多いデジタル教材は、紙での学習が苦手な生徒から、発展的な内容を求める生徒まで、幅広く支えるツールになるだろう。
 だがデジタル教材は、教科書のように、文科省が詳細に審査する仕組みにはなっていない。教科書会社も手探りなのが実情だという。質をどう担保するかが課題となる。
 教員には、授業に合った教材を選ぶ力や、個々の生徒の興味や課題への目配りが求められる。対応できる指導力の養成が急務だが、既に多忙な現場にその余裕は少ない。
 教員の労働環境は改善が進んでいるものの、なお厳しい状況にある。
 22年度の勤務実態調査結果によると、残業時間が月80時間の過労死ラインを超えた教員が、小学校で約14%、中学校では約36%いた。精神疾患を発症する人も多く、なり手不足も深刻化している。
 デジタル化への対応を現場の努力に委ねるのでは、負担は増えるばかりだ。文科省は、人と時間を確保し、教員が創意工夫できるよう環境を整備する必要がある。
 子どもの視力の悪化を懸念する声も依然として聞かれる。22年度の学校保健統計調査では、裸眼視力1・0未満の小学生は37%、中学生は61%で、低下傾向が続いている。デジタル機器の利用時間の増加などが関係しているとみられる。
 読解力や学習内容の定着面でも、紙の方が優れているとの研究結果がある。教育のデジタル化は時代の流れではあるが、紙の教科書にも長所はある。双方のメリットを生かし、子どもにとって最善の学びを探ってもらいたい。

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