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2024.04.02 08:00

【宝塚パワハラ】組織の古い体質を見直せ

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 夢や感動を与える舞台芸術が、人権を侵害しながら成り立っているようでは本末転倒だ。問題との向き合い方が問われている。組織体質の徹底した見直しが求められる。
 宝塚歌劇団の俳優の女性が急死した問題で、親会社阪急阪神ホールディングス(HD)は上級生らによる女性へのパワーハラスメントを認め、遺族側と合意した。ハラスメントは14項目になる。角和夫HD会長らが遺族側に直接謝罪し、パワハラを行った上級生らの相当数が謝罪文を遺族に提出したという。
 女性は入団7年目で、遺族側は過重な業務やパワハラによって心身の健康を損ない、昨年9月に自殺に至ったと訴えた。これに対し歌劇団側は、上級生からの指導・叱責(しっせき)で強い心理的負荷がかかった可能性があるとしつつ、ハラスメントは確認できなかったとした。いじめの証拠を遺族側に要求する場面もあった。
 歌劇団側は、遺族側とはハラスメントが起きた背景や言葉の解釈について相違が残っているとする。遺族が故意だと主張したヘアアイロンによるやけどや上級生の叱責などを念頭に、悪意があったとまでは言えないと判断した。その上で、行き過ぎた行為はパワハラに該当するとの認識を示した。
 よりよい舞台を創作したいと思うのは当然だ。日々練習に励むことが作品の完成度を高める。だからといって、長時間労働の強要やパワハラ放置が容認されるわけはない。時代に合わせた俳優教育や雇用形態の在り方、安全確保策をないがしろにしてきた責任は重い。
 歌劇団側は、組織風土を変えなかったことを怠慢と位置付け、過失を認めた。遺族側は歌劇団に過ちを認めさせた意義を、劇団員の人権や健康を守る重要な礎石となったと位置付ける。その反省に基づき組織の再生に努めることが重要だ。
 遺族側との交渉は長期化した。歌劇団側の調査が不十分だったことに遺族側は反発を強めていた。歌劇団としては早期の幕引きでブランドのイメージを守るつもりが、かえって事態を混乱させる結果となった。
 今回、方針転換を図ったのは、事業への影響拡大を食い止めたい思惑が指摘される。また、スポンサー企業との契約更新を要因とする見方もされる。スポンサー側はハラスメントへの批判が自社に波及しないよう慎重になっている。
 それだけに、根本的な原因に踏み込んで変革する必要がある。収束を急ぐあまり形だけの対応にとどめれば問題は繰り返されかねない。
 ファンからは、パワハラが存在した驚きや、認定が遅すぎるとの批判が上がる。こうした声と真剣に向き合いながら、新しい組織づくりを進めることがファンの信頼回復へとつながっていく。
 歌劇団側は、全力で改革に取り組むと表明した。再発防止の一環として、弁護士ら外部の有識者でつくる諮問委員会を設置し、改革への助言を受けるとする。そうした取り組みが注視される。

高知のニュース 社説

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