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2024.03.27 08:00

【紅こうじ被害】迅速に情報を開示せよ

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 小林製薬(大阪市)が製造した「紅こうじ」原料を巡る混乱が広がっている。含有するサプリメントを継続して摂取したとみられる購入者1人が腎疾患で死亡していたことが判明。健康被害の訴えが相次ぎ、食品メーカーなどによる自主回収の動きも拡大した。
 まだ原因成分や摂取との因果関係など不明な点も多い。誰もが口にし得る食品や補助食品の原料に危険があるなら、消費者が不安を募らせるのも当然だ。実態の解明を急ぐことはもちろん、まずは流通範囲などに関する正しい情報を積極的に開示して、不安の拡大を食い止めなければならない。
 小林製薬は2016年に紅こうじ原料の供給を開始。自社製品のサプリなどに使うほか、製造量の8割ほどを子会社を通じて飲料・食品メーカーなどに販売してきた。
 このため問題の発覚以降、自主回収が日本酒や菓子、パン、みそなど幅広い製品で相次いでいる。販売先には卸売業者も含まれることから、品質問題の影響はさらに広がる恐れがある。
 健康被害は、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロール値を下げる効果をうたった、機能性表示食品の自社サプリで発覚した。多数の人が腎疾患などで入院しており、相談件数も日を追って増加。このうち約3年間にわたって摂取していた購入者がことし2月に亡くなっていた。憂慮すべき事態といわざるを得ない。
 現時点では、原因成分や健康被害との因果関係ははっきりと分かっていない。紅こうじは伝統的な食品原料でもあり、天然の着色料や風味付けなどにも幅広く使われてきたからだ。
 健康被害をもたらした可能性として当初、紅こうじ由来のカビ毒「シトリニン」が注目された。欧州連合(EU)では、筋肉や肝臓の障害が疑われる副作用が報告され、サプリ使用に基準値が設けられたが、今回は検出されていない。
 一方で、一部の原料に同社が想定していなかった成分が含まれていた可能性が浮上したという。この成分にどんな作用があり、なぜ製品に含まれていたのか。再発防止に向け、解明を急ぐ必要がある。
 ただ、消費者の不安の大きさは口にする可能性に比例するといってよい。小林製薬は自社製品はむろん、他社への出荷分も供給網の末端まで確認して、迅速に情報を開示するべきだった。製造・販売元として、その責任を十分に果たしたとはいいがたい。
 同社が健康被害を把握したのはことしの1月。それから自主回収までに約2カ月を要した。
 記者会見では事実確認などに時間がかかったと説明したが、その判断は果たして適切だったか。事態を把握後、速やかに公表していればより早く被害の周知を図り、原料に使われた製品を特定することで、被害や不安が広がることを防げたのではないか。健康に関わる企業の倫理観が問われている。

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