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2024.03.22 08:00

【香港国安条例】自由がさらに後退する

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 言論の自由などへの取り締まり強化で批判を抑え込もうとして、社会の活力が失われては元も子もない。市民や企業を圧力にさらす施策は受け入れられはしない。
 香港立法会(議会)は国家安全条例を可決した。23日施行される。
 香港では中国指導部の主導で国家安全維持法(国安法)が2020年施行され、民主派への圧力を強めてきた。条例は国安法の足りない部分を補うと、香港政府トップの李家超行政長官は位置付けた。
 国家への反逆や反乱の扇動、国家機密の窃取やスパイ行為を新たに犯罪と規定した。外国勢力による香港への干渉を禁じ、干渉に協力したと見なせば処罰の対象となる。
 目的はスパイ摘発にとどまらない。扇動罪の定義が拡大され、言論や出版、表現の自由にも制裁が加わる。民主派への締め付けはさらに強化されることになる。
 中国では改正反スパイ法が施行され、外国人への監視が強化された。5月には機密情報の管理を厳しくする改正国家秘密保護法が施行される。国家安全を最優先する習近平指導部の意向が香港にも反映され、統制強化が進む。
 この条例は犯罪行為の定義が曖昧で、香港の自由が一段と後退するとの批判が各国から上がっている。恣意(しい)的な運用を排除する方策は明確になっていない。犯罪行為に当たるかどうかは当局の意向に委ねられる可能性が高まる。
 それにもかかわらず、親中派がほぼ独占する立法会は2週間足らずの審議で可決した。民主派支持層は意見の表明で取り締まり対象となる危険を警戒し、反対運動は盛り上がらなかった。過去には反政府デモなどで意思表明をしてきた市民を国安法が萎縮させている。
 影響は香港に進出する企業や団体の活動にも及ぶと想定される。これまでの行動が違反と見なされないか危惧される。対話を通した理解促進には程遠い。強硬姿勢を打ち出すばかりでは困惑が広がり、香港撤退につながってしまう。
 香港に高度の自治を認めた「一国二制度」の柱である法の支配は大きく後退している。香港は中国本土への投資の窓口の役割を担ってきたが、国際都市としての魅力が失われていく。政府側が香港の安全を掲げた対応を強化するほど香港離れが加速する結果となるのは皮肉だ。
 中国経済は不動産市況の低迷で減速している。習近平国家主席の「1強」体制が進める大国化への警戒感は根強い。各国は政治的不透明感から中国離れの動きを強め、新たなサプライチェーン(供給網)の構築を急いでいる。香港の一国二制度の原則に立ち返ることが、国際社会からの信頼獲得には欠かせない。
 香港での対応は台湾への圧力とも受け止められる。中国は台湾について、独立と外部からの干渉に反対する立場を鮮明にしている。だが、強権的な対応は反発と混乱を招いてしまう。条例の運用は国安法とともに抑制的であるべきだ。

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