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2024.03.21 08:00

小社会 安いニッポン

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 バブル景気の頃の小話がある。米国から来た男が東京のレストランに入った。女性店員が言う会計はサンドイッチが17ドル、ジュース8ドル。高くて驚く。「ニューヨークの強盗はストッキングを顔にしているが、東京では脚にしている」

 早坂隆さん著「世界のマネージョーク集」から引いた。それも今は昔。3年前の東京五輪では、記者団に弁当が出た。値段は1800円。海外の記者は「おいしい日本食の弁当を1800円で食べられるなんて」。日本の記者は「とても手が出ないよ」。

 バブル期から30年余り。日本の平均賃金は実質、4%しか増えなかった。そこへロシアのウクライナ侵攻や円安による資源価格、輸入品の高騰に伴う物価高。食べ物でなくても、「安いニッポン」を思う場面は多くなった。

 日銀がマイナス金利政策の解除を決めた。賃金と物価がそろって上がる好循環が強まったと判断したという。ただ、今春闘の賃上げ率が高いのはまだ大手の話。地方や中小企業には「どこの世界のこと?」という向きも少なくあるまい。

 実質賃金は1月まで22カ月連続で前年同月を下回っている。生活実感は上向かず、「とても手が出ないよ」と感じることが増えた層も厚いのでは。好循環を言うのであれば、政治にも幅広く恩恵を行き渡らせる政策が問われよう。

 異次元から普通へ、といわれる転換点。安いニッポンにどう作用するかはまだ見えてこない。

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