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2024.03.16 08:00

小社会 悪銭身につかず

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 悪銭身につかず、という。不正な所得は無駄に使いがちで、結局は残らないとの意味。ただ、今夏から1万円札の顔になる実業家、渋沢栄一は体験を口述した「実験論語処世談」で「悪銭も時には身につく」と語っている。

 もっとも、悪銭を肯定しているわけではない。いわく、道徳に反して悪銭をためても、途中で善心に戻り善行を積む人もいる。悪銭をためるほど優れた知恵のある人もいる。しかし、身についたとしても一代限り。〈結局永(なが)持ちせず、其(その)人の身から離れて往(い)ってしまふものである〉。

 その「悪銭―」や、「贖罪(しょくざい)寄付」「金に色はない」といった言葉がつい浮かんだ。自民党の裏金事件。党内では、裏金の相当額を能登半島地震の被災地支援に充てる案が出ているという。

 野党や世論には、「裏金を個人所得として納税しないのは脱税に当たる」という厳しい視線がある。その批判を回避する思惑もあるとか。だが、悪銭で支援される被災地には複雑な思いを抱く人もいるに違いない。

 国会の政治倫理審査会で茶番が続いている。やめたはずの裏金づくりを誰が復活させたのか。派閥幹部は皆、「知らない」「記憶にない」。テレビアニメではないが、「犯人はこの中にいる」と言いたくなるような保身と無責任のミステリーに見える。

 誰か1人ぐらい、善心に戻って正直に語る政治家はいないのか。悪銭を身から離すよりも実態解明の方が先だろう。

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