2024.03.12 08:00
【オスプレイ再開】安全への懸念が拭えない
ただ、米側は「部品の不具合を特定した」とする以外は事故原因の詳細を明らかにせず、安全性の懸念が払拭されたとは到底言えない。
オスプレイは飛行停止前、沖縄県をはじめ国内の住宅地の上空を飛行していた。防衛省は、飛行再開前には関係自治体に通知するとしているが、より具体的で根拠のある説明ができなければ、首長や住民の納得は得られないのではないか。
日本政府は、住民の安心・安全を最優先した姿勢を取るべきであり、主体性が問われる。
屋久島沖の墜落事故では搭乗員8人が亡くなり、オスプレイ事故としては開発段階を除いて最多の死者を出した。これまでに多くの事故を起こし、不安視されてきた機体の安全性に、改めて疑問符がついた。
事態の深刻さは、既に世界に470機以上を保有し、飛行停止にすれば安全保障戦略に大きな影響が予想されるにもかかわらず、それに踏み込まざるを得なかった米軍の対応こそが物語る。信頼を大きく損ねただけに、米側には原因究明の徹底と、安全を裏付ける積極的な情報開示が求められた。
しかし事故原因については、部品の不具合に言及した以外は米国法の制限などを理由に明かさない。事故調査自体もまだ継続中という。それでも飛行再開を決めたのは、長期停止で機体が訓練に参加できない、操縦技術が後退するなどの影響を危惧しているためとの見方もある。
見切り発車の要素を否めないが、日本側も同調する。非公開で米から説明を受けた木原稔防衛相が「私自身も合理的だと納得している」と述べるなど、米方針を了とし、陸自の保有機も飛行再開させることを決めた。だが、その判断は国民不在であり、米との関係を優先しているとみられても仕方あるまい。
そもそも事故を巡っては、日本の存在感の低さが指摘されてきた。日米地位協定に基づき、日本には米軍オスプレイの飛行再開を停止する権限はない。事故発生後、飛行停止要請をしても機体はしばらく沖縄県内を飛び交っていた。
搭乗員の遺体や回収された事故機の残骸が米側に引き渡され、日本の捜査権を制限する協定の壁も改めて浮き彫りになった。このような状況を考えれば、飛来地域の住民が不安を持つのは当然だ。
航続距離が長くスピードも速いオスプレイは、中国の海洋進出に備える自衛隊の「南西シフト」の主力装備であり、陸自は17機を導入予定。既に14機は調達済みだ。
日本の防衛はオスプレイへの依存度を高めているが、優先すべきものを間違えてはいけない。日米同盟の中でも、主張すべきは主張していく必要がある。