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2024.03.07 05:00

【中国全人代】5%成長は楽観できない

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 経済の安定成長は強権的な姿勢では実現しない。堅実な施策を重ねて低迷からの脱出を目指したい。
 中国の全国人民代表大会(全人代)が開幕した。2024年の国内総生産(GDP)成長率目標を前年目標と同じ5・0%前後とした。
 23年の成長率は5・2%と目標をやや上回った。ただ、22年は新型コロナウイルス流行で3・0%成長に落ち込んでいた。その水準からの上昇で勢いは力強さを欠いている。
 このため、24年目標の達成には懐疑的な見方が強い。国際通貨基金(IMF)は4・6%に減速すると予測している。
 GDPの3割を占める不動産市況が低迷し、地方政府の債務問題も重い。若年世代は高失業率にあえぎ、新型コロナ収束後も消費は盛り上がらない。消費者物価は下落してデフレ懸念が広がっている。長期的には人口減少がのしかかる。
 中国経済の減速は、ウクライナやパレスチナ自治区ガザ情勢に伴う食料やエネルギー、輸送費の高騰とともに世界経済の下振れリスクに挙げられる。李強首相は、積極的な財政政策で景気を下支えする方針を表明した。だが、効果は見通せない。
 23年の中国の輸出入はともに前年を下回った。李氏は製造業で外資の参加制限を全面撤廃し対中投資を促すという。米国と通商対立が強まる中、サプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)性を高め、電気自動車(EV)など新興産業の育成を目指す。
 しかし、威圧的な行動をとる中国への依存度を軽減するため、各国は新たな供給網の構築を急いでいる。政治的不透明感が増していることも中国離れを加速させる。
 社会統制を強める姿勢は揺るがない。改正反スパイ法が施行され、外国人への監視が強化された。5月には改正国家秘密保護法が施行され、機密情報の管理を厳しくする。投資意欲の減退は避けられない。
 全人代最終日の恒例だった首相会見は取りやめた。経済の減速や、解任が続いた閣僚人事に関する質問を受けたくないからとの推測がある。また、首相の権限縮小を印象づけることで、習近平国家主席の「1強」体制で大国化を推進しようとする意欲が見て取れる。
 軍事力増強の姿勢は鮮明だ。24年予算案で、国防費は日本の防衛費の約4・3倍を計上した。前年比7・2%増で、増加率は23年予算と同水準とした。李氏は実戦を想定した訓練の必要性に言及した。
 中国は核弾頭や極超音速ミサイル開発のほか、先端技術の軍事利用を加速させているとされる。軍拡は国際社会の懸念を強める。周辺国と安定的な関係を築くことが求められる。透明性を欠いた行動で緊張を高めてはならない。
 台湾関係では、中国が独立派と見なす頼清徳氏の総統就任を控える。李氏は「祖国統一の大業を進める」と述べ、独立と外部からの干渉に反対する立場を改めて強調した。強硬姿勢は反発を招くだけで、対話を重ねることが重要だ。

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