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2024.03.01 08:00

【政倫審の開催】首相出席で終わらない

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 政治不信を解消するつもりがあるのかが疑われるほどのどたばたぶりを見せつけた。ようやく事態は動いたが、形だけの取り組みでは不十分だ。真相解明を求める世論としっかりと向き合う必要がある。
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会が開かれた。現役首相として初めて、岸田文雄首相が出席した。
 首相は疑念や政治不信を招いたことを謝罪し、在任中は自身のパーティーを開催しないと述べた。また、政治資金収支報告書に不記載があった議員の政治責任に言及した。
 ただ、党の聞き取り調査は再発防止に重点を置いたとして、裏金化がいつから誰の指示で、何のためにという疑問に明確に答えることはなかった。防止策にも触れたが、背景の検証には踏み込まなかった。
 予算委員会でも答弁してきた首相があえて政倫審へ出席したのは、2024年度予算案を3月中に成立させる審議日程が厳しくなる中、行き詰まる国会を打開するためだ。首相の出席が安倍派幹部らの公開審査を引き出したが、そもそも首相が説得に乗り出さないのがおかしい。
 政倫審は原則非公開で、公開には本人同意が必要となる。このため首相は本人の意思が尊重されるべきだとの考えを示した。だが、「政治とカネ」問題は国民の関心が高く、政治不信につながる。公開を避ければ強い反発が想定できたはずだ。首相は説明責任を繰り返すが、指導力の乏しさを露呈してしまった。
 政倫審開催を巡る自民の迷走ぶりはいただけない。野党は派閥からの還流を収支報告書に記載していなかった衆院議員51人に出席を求め、自民は安倍派と二階派の計5人にとどめた。これに先立ち2人の出席を伝えたが、野党の納得を得られなかった。これでやり過ごせると高をくくっていたのだろうか。
 党内にも若手を中心に、説明責任を果たさない派閥幹部への批判がある。こうした不満を抑え込むことを狙い、幹部5人が出席へ動いたとの見方がある。小出しで乗り切ろうとする姿勢に、この問題との向き合い方がうかがえる。
 さらに、審査の公開を巡り紛糾は続いた。全面非公開や一部議員の容認など二転三転して、結局は大筋合意していた開催日程は見送ることになった。政倫審で説明責任を果たそうとする姿勢は乏しい。
 首相は岸田派の解散を突然打ち出し、追随する派閥もあった。首相の奇策が力を発揮したが、それに頼らざるを得ないのは政権基盤の弱さが影響している。首相の政倫審出席表明が状況を変えたとはいえ、首相自らが意表を突く行動をしなければ動かないほど自民は統治不全に陥っているということだろうか。
 政倫審はきょうも開かれ、安倍派幹部4人が出席する。安倍晋三元首相が派内で定着していた還流を取りやめる決定をしたが、急逝を受けて中止を撤回したとされる。そのいきさつの解明は不可欠だ。もちろん、弁明すべき人はほかにもいる。

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