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2024.02.29 05:00

【婚姻50万組割れ】独身者向け施策は十分か

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 少子化に歯止めがかからない。国内で2023年に生まれた赤ちゃん(出生数)は75万8631人で、初めて80万人を割った22年からさらに5%余りも減ったことが、人口動態統計(速報値)で分かった。
 少子化が地域社会、地域経済に与えるマイナスの影響の大きさは言わずもがなだ。その減少ペースは、国立社会保障・人口問題研究所による将来推計より12年も早く進む。危機的な状況だといってよい。
 岸田政権は「次元の異なる少子化対策」を打ち出し、それを盛り込んだ少子化対策関連法案を今国会に提出している。速やかに施策を展開し、実効性にこだわっていく必要がある。
 少子化の主な要因の一つには婚姻数の減少がある。婚姻数が減ると数年後の出生数が減ることは統計的にはっきりしている。新型コロナウイルスの流行で結婚控えの動きが広がった20年、婚姻数は前年比12%減の53万7500組になった。21年もさらに4%減り、ここ数年の出生数減につながったとの見方ができる。
 22年こそ持ち直したものの、23年の婚姻数は5・9%減の48万9281組となり、戦後初めて50万組を割った。向こう数年の出生数の見通しは、極めて厳しいと言わざるをえないだろう。
 結婚・出産適齢期とされる世代の人口の厚みがあるうちに少子化の流れを変えなければ、状況の悪化は加速度的になる。
 多様な生き方が尊重される時代にあって婚姻率を上げる方法は限られるが、内閣府の調査では未婚の20~40代の男女の7割以上が結婚を希望しているとされる。こうした層を念頭に置いた今後6、7年間の未婚化対策が重みを増す。優先的に対応していくべきだ。
 未婚化や妊娠控えは、20年以降は新型コロナ禍による生活不安が直接的な要因となったが、そもそもは若年層に広がる低所得や不安定雇用が招いてきた。各種世論調査では、年収が低い、あるいは非正規雇用であるほど未婚率は高いとの結果が出ている。若年層が将来を展望できる賃金、雇用制度づくりが急務だ。
 結婚や出産を望まない女性への調査では、理由に家事・子育ての負担が挙がる。出産や子育てがキャリア形成、自己実現の障壁になりがちな状況を変える必要がある。その観点から、男性の育児休業の普及、家事・育児の役割分担などへ制度整備が進み、啓発もされるが、男性の育休期間が短いなど効果はまだ限られる。一層の浸透が求められる。
 岸田政権の少子化対策は、最大で年3兆6千億円を投じる規模感などから「異次元」とアピールする。しかし、これまでに講じてきた少子化対策を検証したようには見えず、児童手当の拡充など、既に子どもがいる人向けの支援が中心になっていることは否めない。
 結婚したいのにできない。そのような若い世代の独身者に施策は届いているか。検証し、必要に応じて強化していく必要がある。

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