2024年 05月06日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2024.02.26 08:00

【少子化法案提出】負担の説明足りていない

SHARE

 政府が少子化対策関連法案を閣議決定し、衆院に提出した。高校生の年代まで児童手当を拡充することなどを柱に、少子化傾向の歯止めを目指す。
 実現には子育て世代や若者の将来不安を払拭する必要があるが、裏付けとなる財源などに関して岸田政権の説明不足は相変わらずだ。国会での議論を通じて、国民の納得と共感を得る必要がある。
 少子化の進展は日本経済や地域社会の未来に暗い影を落とす。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が昨年末に公表した2050年時点の地域別人口推計では、東京都を除く46道府県で、軒並み減少する見通しだった。
 本県も45万人余りまで減り、15市町村では減少率が50%を超えるという。税収とマンパワーの確保が難しくなり、教育や医療、交通といった生活基盤がなり立たなくなりかねない。危機感は高まっている。
 法案は、岸田政権がうたう「次元の異なる少子化対策」の具体化となる。30年代になると、日本の若年人口は倍速で急減すると見込まれる。少子化はさまざまな要因が絡み、対策に特効薬はないとされるものの、今後6~7年の対策で着実に効果を示すことが重要だ。
 児童手当の所得制限を撤廃し、現行中学生までの支給対象を高校生の年代に延長。第3子以降は3万円に倍増する。現在は手取り収入の実質8割を受け取れる育休給付についても、両親がともに14日以上の育休を取った場合、最大28日間、実質10割に引き上げる。
 保育サービスは、親の就労に関係なく子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」を26年4月から全国で展開する。大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラーの支援も法制化を図る。
 少子化は長年の政策課題であり、対策強化は評価できよう。ただ、一連の施策は既に子どもがいる家庭や多子世帯への給付が中心で、偏った印象は拭えない。
 若者世代が安心して結婚や出産に踏み切れる環境が整わなければ、少子化の流れを反転させるのは難しいのではないか。所得の向上や正社員化を促すといった経済・雇用対策を充実して将来不安を和らげる対策も欠かせまい。
 一方、対策と国民負担の関係は、法案提出の段階に至ってもなお説明が不足している。政府は財源確保策の柱の一つとなる「子ども・子育て支援金」について、公的医療保険料に上乗せされる徴収額は、加入者1人当たり26年度が月300円弱、28年度は500円弱との試算を示した。しかし、実際は加入する医療保険や収入で金額は変わる。
 国民にとって支援金は新たな負担となることは明らかだが、岸田文雄首相は今後の賃上げと医療・介護分野の歳出削減で「実質的な負担は生じない」との説明を繰り返す。こうした曖昧な説明がかえって国民の理解を難しくしていないか。政府には率直な説明を求める。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月