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2024.02.23 08:00

小社会 戦争の語彙

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 ある日突然、戦争が始まり、平和な暮らしから切り離される。すると、日常的に使う言葉にも違った意味がこもってくる。ウクライナの詩人オスタップ・スリヴィンスキーさんは、そんな単語を集めて「戦争語彙(ごい)集」を編んだ。

 西部の街リビウで、避難列車から降り立つ多くの人々の話に耳を傾け、書きとめた。辞書のように並んだ見出しには銃弾や戦車といった、いかにも戦争という単語は多くない。

 例えば、「ゴミ」。ある女性にとって2年前の2月24日はごみ出しの日だった。ミサイルが落ち、すぐに逃げなければならない状況で「けれど、ゴミを出さなければなりません」。分別をどうするかも頭をよぎったという。

 「星」。別の女性は爆撃でガラスが砕け散るのを防ぐため、窓に交差させるようにテープを張った。朝、日が昇るとテープの影が壁をゆっくり動いていく。「星のように」。戦争で奪われていく日常が、想像しやすく伝わる。

 邦訳したのは日本文学研究者のロバート・キャンベルさん。戦時下で最初に起こることは、「私的な領域と公的な領域の境目が破られることかもしれません」と書く。理不尽な暴力に巻き込まれ、私的な領域や幸福を失った多くの人々はいま、ウクライナにもガザにもいる。

 「プーチンの戦争」もあすで2年になる。攻防や地政学といった「大きな言葉」だけでなく、市民の「むき出しの言葉」にも変わらず耳を傾けたい。

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