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2024.02.15 08:43

「溺死か、凍死か」動画に撮影―まず耐震 能登が問う高知の今(上)

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巽通敏さんが生き埋めになっていた家。1階がつぶれている(石川県珠洲市蛸島町、本人提供)

巽通敏さんが生き埋めになっていた家。1階がつぶれている(石川県珠洲市蛸島町、本人提供)

 元日午後4時過ぎ。能登半島の先端、石川県珠洲市に立つ1軒の木造住宅が、ガタガタ震えだした。

 市嘱託職員、巽通敏(たつみ・みちとし)さん(52)は1階の廊下にいた。他の「音」は思い出せない。居間の天井が抜け、茶だんすとともに自分も床に倒れた。次の瞬間、目の前は真っ暗だった。

 自宅に押しつぶされた。

 あおむけのまま、動けない。体の左に梁(はり)だか柱だかが乗っていた。「どうなっとんの?」。そう独りごち、唯一動く右手でズボンのポケットからスマホを取り出した。圏外だった。

 間もなく、大津波警報を知らせる役場の防災無線が響いた。自宅は海岸から200メートル。近所の人が避難を始めたようだ。車のエンジン音が遠のいていく。

 胸が圧迫され、息が苦しい。「逃げれるわけないやろ。もう溺死か」。後で自分だと分かるよう、ポケットに運転免許証があることを確かめた。

 なぜか冷静だった。

 □  □ 

 巽さんの姉、寺尾小夜子さん(61)は本県男性と結婚し、高知市で暮らす。能登半島地震の発生は、娘の電話で知った。実家にいる通敏さん、好弘さん(59)の弟2人に電話したが、つながらない。

 しばらくして好弘さんと連絡が取れた。ランニング中に被災し、高台に避難していた。ただ、津波のため自宅には戻れず、通敏さんの安否は分からない。

 珠洲市の友人からの交流サイト(SNS)で、家々がつぶれたと知った。漁師町の風情が残る、瓦屋根の家々。お年寄りも多い。

 寺尾さんが小学生の時に建った実家は、耐震化していない。「埋まってたら無理や」。最悪を覚悟した。

 □  □ 

 日が暮れた。通敏さんは動けず、気温は地震発生時の5度から氷点下に。寒さで震えているのと区別がつかないほど、余震が体とがれきを揺らした。「溺死はたぶん免れた。凍死だな」。そう思い、わずかな周囲をスマホで撮影していた。

巽通敏さんの自宅。1階の車庫もつぶれた(寺尾小夜子さん提供)

巽通敏さんの自宅。1階の車庫もつぶれた(寺尾小夜子さん提供)

 ふと、…

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