2024.02.11 08:00
小社会 世界のオザワ
「世界のオザワ」に対し失礼を承知で例えると、親しみやすい音楽おじさん。30年以上前から生のクラシック音楽を小さな村でも演奏し、子どもたちと一緒に音楽会も開いてきた。
そのいきさつが、かつて本紙に載った。米ボストン交響楽団の音楽監督時代、日本にいるわが子の様子が気になり、帰国するたびに小学校に足を運んだ。それが縁で、学校で開いた音楽会が「僕の人生を変えた」という。
児童たちが演奏に乗ってきて、「生の音楽が人に与える影響の大きさ、ハーモニーやリズム、メロディーの良さは理屈抜きで伝わることが分かった」。いい演奏は、その音楽になじみのない人の心にも届くと悟ったのだろう。
2003年の新日本フィルハーモニー交響楽団の高知公演で、小澤さんが県内中高生のリハーサル見学を快諾したのもその表れである。演奏に触れた生徒たちは、大人になったいまも生の音楽に親しんでいるに違いない。
小澤さんは、若い頃から血のにじむような努力を重ねてきた人でもある。だからこそ大舞台であろうと、小さな音楽会であろうと人の心を打つ。通にも、そうでない人にも届くから「世界のオザワ」である。