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2024.02.07 08:00

【米軍が報復攻撃】中東の不安定化を避けよ

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 中東の緊張を高めてはならない。軍事行動の強化は地域の安定化を遠ざけ、偶発的に戦火が拡大する恐れがある。対話への道筋を探ることが求められる。
 米中央軍はイラクとシリアの親イラン武装勢力に攻撃を行った。ヨルダン北東部の米軍施設で米兵3人が死亡した無人機攻撃への報復とし、今後も継続する方針を示した。
 昨年10月にパレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、中東で米兵が攻撃により死亡したのは初めてだった。バイデン米大統領は自身が指示した報復だと説明した。
 米軍はガザでの戦闘が始まってから中東に戦力を集中し、イスラエルに敵対する勢力をけん制してきた。しかし、武装勢力を刺激して駐留米軍が攻撃対象となる事態が増え、負傷者が出ていた。紅海やアデン湾では商船も攻撃を受けている。
 11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏にとって、国内世論は無視できない。親イラン武装勢力への圧力不足が批判され、一方ではイスラエル寄りの姿勢に反発が向けられる。報復に乗り出さなければ弱腰と見られかねず、かといって圧倒的な軍事力で犠牲が拡大すれば対立の激化を招く。報復が新たな危機をつくり出すことになる。
 米側は、イランが直接反応すればイランへの直接攻撃に踏み切る可能性を排除しないとけん制した。一方で、イランとの紛争は望んでいないと主張する。厳しい局面をコントロールしたい狙いがうかがえる。
 イランも3月に国会選挙が実施されるだけに弱い態度は見せられない。米軍攻撃への関与を否定するとともに、脅威には断固対応すると反発した。ただ、体制崩壊さえちらつく全面的な紛争に発展することは避けたいのが本音だ。危機拡大の意向はないとし、緊張悪化を望まないことは米国にも伝えたとされる。
 ただ、米軍の報復攻撃後も、親イラン武装勢力側による米軍駐留基地への攻撃が行われた。イランの各組織への影響力には強弱があるとされる。独自の動きには対処できないことが想定される。混迷の度合いが深まらないように警戒が必要だ。
 中東を大きく不安定化させかねないイランの核武装を阻止するため、2015年にイラン核合意が結ばれた。核開発を制限する見返りに米欧が制裁を解除する仕組みだ。しかし、トランプ前米政権による合意離脱などで機能不全に陥り、バイデン政権は合意再建を目指したものの停滞している。
 ガザでの戦闘が再建交渉に立ちはだかる。戦闘を休止し、完全終結へとつなげていくことが交渉の進展には不可欠だ。もとより、死傷者をこれ以上増やさず、人権状況を改善する必要がある。
 イスラエルは後ろ盾の米国の批判を意に介さない場面さえあり先行きは見通せないが、戦闘が続けば中東の安定は訪れない。主張の溝は深いだけに仲介役となる各国の取り組みの重要性は一段と高まっている。

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