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2024.01.31 08:00

【施政方針演説】信頼回復の決意は本物か

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 通常国会で岸田文雄首相が施政方針演説を行った。
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、今国会は「政治改革国会」「裏金国会」の様相を呈する。政治の信頼回復が最大のテーマとなる。首相は「国民の信頼なくして政治の安定はない」とし、自民党政治刷新本部が中間報告としてまとめた改革案を挙げて「私自身が先頭に立つ」と決意を示した。
 ただ自民案は、政治資金規正法の改正をはじめとして具体性を欠く。施政方針演説前に衆参予算委で行った集中審議でも、連座制、政策活動費など具体項目について首相は踏み込まなかった。「信頼回復へ火の玉になる」と言いながら取り組みが遅々とする経過などを踏まえれば、いくら改革意欲を訴えても額面通りに受け止めにくいのが実情だ。
 党内の反発を買うからか、首相は実態解明にも言及しなかった。抜本的な対応なくして国民の信頼回復はない。野党との協議を経て成果を示す必要がある。
 施政方針演説は能登半島地震を最初に取り上げた。首相は犠牲者を悼み、「復旧・復興支援本部」の新設を表明。「被災地の再生まで責任を持って取り組む」と強調した。
 被災地ニーズは時間とともに変わる。機動的な対応が必要で、与野党の協力姿勢も求められる。家屋の耐震化が進まなかった地域性、交通・輸送網が寸断されやすい半島特有の地形など課題も浮かんでおり、それらを踏まえた議論も必要だ。
 経済再生については、首相は政権の最大の使命であることを改めて訴え、多くの時間を割いた。デフレからの完全脱却など「成果を実感する年に」と呼び掛けた。
 物価高を上回る賃上げが必要な局面であり、岸田政権が多くのカードを切っているのは事実だ。だが政治不信が施策の実効性の足かせにもなりかねない。裏金事件のけじめが、なおさら重要になる。
 演説全般を通じては、「新たな力」という言葉をキーワードにして横串を刺した。能登半島地震対応では、住民の絆と先端技術の組み合わせが「新たな力」に、経済再生では新旧勢力や官民の組み合わせが「新たな力」になっているなどとし、「明日は今日より良くなる日本」の力になると訴えた。
 それ自体は悪いことではないが、「新しさ」を殊更にアピールし、明るい将来を漠然と想起させようとしているようにも映る。一方で、積み残してきた国民の疑問を正面から語らない。そのような姿勢には、論点隠し、その場しのぎ感が漂う。
 抜本強化する防衛力の在り方や国民負担の見通し、異次元の少子化対策の財源などはなお曖昧だ。国民の反対論が多い原発回帰は、方針転換したことにすら言及しない。ちぐはぐさが指摘される財政運営は「経済を立て直し、健全化を進める」と楽観論のみを披歴する。
 いずれも、首相が掲げる「丁寧な説明」はされていない。国会での本格的な論戦が求められる。

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