2024.01.29 08:00
【NATO拡大】対立回避の動きも強化を
北欧スウェーデンのNATO加盟が近く実現する見通しとなった。32カ国目で、北欧5カ国が加盟することになる。
5カ国のうちノルウェー、デンマーク、アイスランドは設立当初から加盟する一方、スウェーデンとフィンランドは中立的な外交政策を掲げて非加盟だった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を受けて世論が加盟を支持し、方針転換した。フィンランドは2023年4月に正式加盟している。
スウェーデンの加盟はトルコの反対で遅れていたが、議会が加盟を承認する議案を可決した。残るハンガリーも加盟支持を表明した。
トルコは非合法武装組織クルド労働者党(PKK)をスウェーデンが支援していると反発し、また米国製戦闘機の追加購入を求めていた。ハンガリーは、オルバン首相の強権的な政治姿勢に批判的なスウェーデンに対して不満があったようだ。
両国のロシアとの関係も見過ごせない。トルコは欧米の対ロ制裁とは距離を置く。同時にウクライナとも良好な関係を保ち、仲介に意欲を見せる独自外交を進めてきた。ハンガリーはエネルギー面でロシアに依存する。対ロ関係を見据えて批准を遅らせることで、自国への利益を引きだしたい思惑がうかがえる。
ロシアはNATOの東方拡大阻止を掲げてウクライナに侵攻した。しかし、それが緩衝地帯だった北欧2国の加盟への動きにつながった。強硬姿勢が自らに跳ね返った。
バルト海にはロシアの海軍基地もあるが、NATOがほぼ全域を取り囲むような格好となる。沿岸の軍事的脅威の低減へ向けた動きを加速させることになる。
集団防衛を定めるNATOは、部隊の増員などで即応性を高め、対ロ抑止力を強化している。バルト3国は有事には陸路が遮断され孤立する恐れがあったが、NATOがバルト海での優勢を確保すれば海上からの展開が容易になるとみられる。
NATOの防衛力強化にロシアが反発を強めることは必至だ。安全保障環境の変化は免れない。それだけに、緊張緩和へ向けた取り組みを怠ることはできない。
ロシアはウクライナ侵攻に伴い、バルト海での動きに対処する能力が乏しいとの見方がある。その分、ウクライナで攻勢を強めかねない。既に侵攻は長期化し、欧米の支援疲れも指摘される。外交努力の重要性は一段と高まっている。
ロシアが北朝鮮との関係を強めたことで東アジアの緊張も高まっている。日本の安全に関わってくる。防衛政策を説明と議論がないまま転換するようでは支持は得られない。国会で堂々と論じる必要がある。